【Solution Linkage MG編】 福美建設株式会社【長野県駒ケ根市】
日立建機のICT・IoTソリューション「Solution Linkage」を導入したことで
現場はどう変わったか、経営にどんな影響を与えたか――。お客さまの評価をレポートする。
今回のポイント
建設機械メーカー選びの決め手は
継続的なバックアップ体制
やれば気付けるさまざまなメリット
自ら希望してICT施工も
小さな会社でも小規模工事でも
工夫次第でICT活用は可能
執行役員 建設事業本部 本部長
松村 治氏
ICTの導入は、作業効率化や人手不足対策だけでなく、建設現場の魅力度アップにもつながるはずです。若い人たちに興味を持ってもらうためにも、積極的にICT化を進めていきたいですね。
東は南アルプス、西には中央アルプス、2つの山脈に挟まれた伊那谷は、天竜川に沿って南北に延びる細長い盆地だ。そんな伊那谷のほぼ中央、長野県駒ケ根市に本社を置く福美建設は、このエリアを中心に土木工事や橋梁・道路の保全などを手掛ける。急峻な山に囲まれ、「暴れ川」とも呼ばれる天竜川水系の地形的特性もあって、護岸や砂防堰堤の工事が多いという。
福美建設がICT施工に本格的に取り組み始めたのは2018年頃から。国土交通省管轄の工事でICT施工の指定が増えてきたことに対応するためだ。同社の執行役員で建設事業本部本部長の松村治氏は「当社のような中小規模の建設会社ではICTの専門部隊を組織したり、専門人材を揃えたりというわけにはいきません。現場を担当する社員が、試行錯誤しながら進めてきました」と話す。
松村氏自身もICT施工の現場管理経験があり、そのメリットを実感しているそうだ。「最初は不安でも実際にやってみると、例えば丁張が不要になるなど目に見える効果もたくさんありました。いまは建設部門を統括する立場ですが、現場からICTに関して新しいことをやりたいという声があれば、基本OKすることにしています」(松村氏)。
プロのサポートを積極活用 続けることで分かるICTの効果
伊那谷の南部、飯田市に近い長野県下伊那郡松川町で、福美建設がICT施工で進める現場がある。天竜川水系のダム管理施設の建設に先立つ地盤整備工事で、元の軟らかい土を掘削・搬出し、硬い土で埋め戻す工事だ。埋め戻すといっても、所定の高さまで一気に土を入れるわけではない。地盤の強度を確保するために何層にも分け、その高さごとに管理・転圧する必要がある。そうした作業の効率化に威力を発揮しているのが、日立建機のSolution Linkage MGだ。
これは油圧ショベルに後付けできるマシンガイダンスキットで、この現場ではSolution Linkage MGをセットした20tクラスの油圧ショベルをレンタルで導入している。各層の高さを3次元データとして入力すると、運転室内のモニターには設計面のラインが表示される。オペレータはこのラインに沿ってバケットを操作することで、正確かつ効率的に高さを管理できる。
「以前まで活用したICT専用機と同等の高い精度を要求する中、遜色のない高い精度品質が確保できています」と語るのは、この現場の管理者である同社建設事業部の片桐貴司氏。片桐氏にとってICT施工7件目となるこの現場では、Solution Linkage MGのほか、振動ローラによる転圧作業を管理できるSolution Linkage Compactorも活用している。
片桐氏が最初にICT施工に携わったのは6年ほど前。何から始めればいいのかも分からず、まずは建設機械メーカー数社に相談したという。「性能や機能はそう大きな違いはありませんでしたが、日立建機の『最後までバックアップすることを約束します』という言葉が決め手になりました」(片桐氏)。以来、日立建機とともに、新しいことにも挑戦しながら積極的にICT化に取り組んできた。
当初は3次元データ測量を外注していた片桐氏だが、費用や工期への影響などの面で課題を感じていた。日立建機に相談すると、ドローンを活用するSolution Linkage Point Cloudを紹介され、自社でドローンを保有していたことから3次元データ測量も内製化できるようになった。
「専門的な知識はなくても、まずはプロに相談し、できるところからやってみることですね。経験は次につながりますし、そうすれば少なからずICTの効果や意味を実感できます」と片桐氏。実際に日立建機に相談し、提案をもらう中で、新しいICT活用のヒントや気付きも生まれているという。一方、建設機械メーカーにとっても、片桐氏のように工夫しながらICT施工に取り組む現場技術者の声は大いに参考になるはずだ。この現場でもいくつか改善のリクエストが寄せられており、日立建機は対応策を検討している。
「比較の意味で他社の製品を使ってみようかと思ったこともありましたが、いまのところ『最後までバックアップする』という約束は守られているので、当面は日立建機との関係性は変わらないと思っています」(片桐氏)。日立建機と福美建設、今後も良好なパートナーシップが続きそうだ。
建設事業本部 建設事業部
片桐貴司氏
日立建機には「新しい製品や技術ができたらどんどん持ってきて」と伝えています。いろいろ使ってみて意見交換をしながら、お互いに進化していけたらいいですね。
取材・文/斎藤 睦 撮影/小島真也