Vol. 09 難条件が生んだ都心のコロッセオ 大橋ジャンクション (東京都目黒区)
大橋ジャンクションは、2015年に全面供用を開始した。屋上の公園は地上からエレベーターで上がる。
設計者はジャンクション部分が日本シビックコンサルタントとオリエンタルコンサルタンツ、屋上の公園は創建と日本緑化センター。
東急田園都市線の池尻大橋駅から徒歩数分。2つの超高層ビルに挟まれるように、コンクリート製の曲面の壁がそびえ立つ。ローマのコロッセオのような巨大構造物が、「大橋ジャンクション(JCT)」だ。
JCTの上には約7000㎡の「目黒天空庭園」が広がる。JCTの全面開通に先立つ2013年に開園し、毎日公開されている。ループ状の道路の上に蓋をして整備したもので、1周約400m。地上7m~35mと高低差があるので、周回することはできない。それでも多くの人が散策したり、歓談したり、本を読んだりしている。
このJCTは法規と技術を巧みに組み合わせて実現した。まず、形状がコンパクト。分岐する首都高速3号渋谷線(高架)と中央環状線(地下)に70mの高低差があるため、2回転するループを2 段に重ねた。
その分、排気ガスや騒音が集中する。そこで、周囲を壁と屋根で囲み、2004年に法制化された「立体都市公園制度」で区の公園を整備。雨が傾斜面で濁流になるのを防ぐため、18カ所に堰堤、21か所に雨水貯留槽を設置した。
立地が一等地であることから、ビルをジャンクションとセットで計画。その収益により事業費の負担を軽減した。ビルの一部は、地下部の道路の上に立っており、これも珍しい(「立体道路制度」を適用)。難条件が生んだ都心ならではの土木構造物だ。
宮沢 洋(みやざわ・ひろし)
画文家、BUNGA NET代表兼編集長。1967年生まれ。1990年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、日経BP社入社。2016年~19年、日経アーキテクチュア編集長。2020年独立、建築ネットマガジン「BUNGA NET」を運営。著書に『隈研吾建築図鑑』『日本の水族館五十三次』など