〜鹿島建設株式会社 東武鉄道伊勢崎線 とうきょうスカイツリー駅付近高架化工事〜
日立建機は鹿島建設と共同で、電動建機の現場実証を行った。都内の建設現場で日立建機のバッテリー駆動式ショベルを稼働させ、電動建機の活用に不可欠なノウハウを得るとともに、未知の課題を洗い出すことが狙いだ。現場で施工管理を担当する鹿島建設の松元貴史氏に、実際に稼働させた上でのバッテリー駆動式ショベルの評価と課題について聞いた。
| 工事概要およびバッテリー駆動式ショベル現場実証概要 | |
| 工事名称 | 東武鉄道伊勢崎線とうきょうスカイツリー駅付近高架化工事の内土木関係(Ⅰ工区) |
| 発注者 | 東武鉄道株式会社 |
| 施工者 | 鹿島・東武谷内田・東鉄建設共同企業体 |
| 実証期間 | 2025年6月9日~ 2025年6月17日 |
| 実証目的 | 稼働時間予測、充電タイミング/充電設備提案、CO₂排出量削減の効果測定など |
| 導入建機 | ZE85、ZE135 |
建設現場におけるCO₂ 排出量削減への貢献を期待
性能・操作性は高評価、事前の充電計画が鍵に
鹿島・東武谷内田・東鉄建設共同企業体
とうきょうスカイツリー駅高架化Ⅰ工区JV工事事務所
工事課長
松元貴史氏
鹿島建設は、2050年度にサプライチェーン全体のCO₂排出量を実質ゼロにし、さらにすべての調達資材をサステナブルなものに切り替えるという目標を立てています。その一環として、建設現場におけるCO₂排出量削減にも取り組んでいます。建設機械の電動化もその取り組みの一つです。今回は当社の環境本部とつながりのあった日立建機とともに、現場実証という形で2台のバッテリー駆動式ショベルを導入しました。目的は、エンジン式油圧ショベルと比較して性能や操作性はもちろん、バッテリー駆動式ショベルの稼働時間や充電設備の運用方法・使い勝手などを実際に使ってみて確認することでした。
私自身は主に土木の現場で施工管理を担当してきましたが、これまで電動建機を扱ったことはありません。最初にバッテリー駆動式ショベルが現場に搬入されたときの第一印象は「デカいな」でした。バッテリーが搭載されているため、同じクラスのエンジン式油圧ショベルよりも大きく見えたのでしょう。あとは駆動音。電動モーターですから、発する音はとても小さい。現場のスタッフも作業員もバッテリー駆動式ショベルは初めてということもあって、興味津々という感じでしたが、特に音の静かさには感心していましたね。
性能は十分、バッテリー駆動式のメリットも
今回、バッテリー駆動式ショベルの現場実証に当たってはその仕様や機能などについて事前に確認していましたが、実際に稼働させてみて性能面では従来のエンジン機と同等と感じています。違うのは稼働時間や充電などの運用面ですね。バッテリー駆動式ショベルは、エンジン機に比べて稼働時間が短いため、作業前にフル充電にしても休憩時間を利用して充電する必要があります。この現場では昼の休憩時間を充電に充てていましたが、充電設備とバッテリー駆動式ショベルをつなぐケーブルの長さに限りがあるので、ショベルを充電設備のそばまで移動させる必要があります。その際、充電設備の近くが掘削中だと近づけないので、1日の掘削作業工程に気をつかいます。ここは広い現場ではないのでそれほど支障にはなりませんでしたが、大きな現場では充電設備の設置場所や台数、作業手順など綿密な計画が必要になるかもしれません。
性能や使い勝手という点では、バッテリー駆動式ショベルは現場で十分に活躍できる建機です。音が静かで排出ガスも出ないので、技能者のみなさんからも好評ですし、住宅地や都市部の狭い場所での工事などは大きな強みとなるでしょう。一方、稼働時間や充電のタイミング・方法など運用面では課題も見えてきましたが、日立建機からは積極的な提案とサポートを受けており、最適な運用方法をともに模索しています。建設現場におけるCO₂排出量削減は、建設業が抱える課題の一つですが、その手段は電動建機の導入だけではありません。例えば、RD燃料などカーボンニュートラル燃料についても、当社では試験運用に着手しています。また、建設機械そのものだけではなく、作業の効率化や生産性向上も不可欠でしょう。建設機械メーカーにはそうしたさまざまな視点で提案していただけることを期待します。
| オペレーターの声 |
大橋マイケル氏
もちろんバッテリー駆動式ショベルに乗るのは初めてでした。従来のエンジン機と多少は違うのかなと思っていましたが、いつも通りの操作感でしたね。パワーもあるし、動きがよりスムーズに感じました。あとは音が静かなこと。運転席で操作していても車外の音が聞こえるんですよね。別の技能者の声もよく聞こえる。大声を出さなくても会話ができるので、現場の安全という意味でも音の小ささは重要なことだと思います。
片山英佑氏
当たり前ですが、バッテリー駆動式ショベルに乗ってみて気づくのは排出ガスがないことですね。キャビン内にも熱がこもらない感じがします。環境にいいのはもちろん、屋内作業などには最適でしょう。操作性に違和感はないです。むしろレバーが軽くスムーズ過ぎて戸惑ったくらい。今回は昼休みに充電するので、それまでに充電設備のところまで戻らないといけない。午前中の作業の段取り調整は必要ですね。