各方面の現場でイキイキと輝く活躍する女性にその醍醐味や将来の目標などをインタビュー。
誰かにとっての“かけがえのない服”を長く愛用できる一着に復元
リペア職人 Blue Champion 加藤香苗さん
新潟県出身。高校生のときに古着にハマり、卒業後は新潟市内の古着店に就職。販売とリペア業務を担当する。2024年に独立しBlue Championをオープン。ただ直すのではなく、「今後も長く楽しむための一着」として生まれ変わらせるリペアを提案している。
古着好き独自の観点が仕事の質を底上げ
新潟県新潟市にある「Blue Champion」は、ヴィンテージデニムを中心とした洋服の修繕・リペアを行う専門店。服を再生するかのような繊細な技術と、一着一着と丁寧に向き合う仕事が評判を呼び、国内外のデニムの収集家やヴィンテージの洋服を扱う専門家からの依頼が絶えない。
代表の加藤香苗さんは、リペア歴20年以上のベテラン。前職の古着店で裾上げや海外から仕入れた古着の修復を任されたのを機に、独学でリペアの技術を習得。経験を積むうちに顧客からのリペア依頼や、希少価値の高いヴィンテージデニムなどのメンテナンスも請け負うようになっていった。
「依頼を請けるときに大切にしているのがヒアリング。というのも、洋服の擦れ方や破れ方には個人差があるんです。再び破損しにくい状態に仕上げるためにもお客さまの生活スタイルから破れた原因や生地が弱くなりやすい部分を分析し、その方の一着に合ったリペアを提案しています」
修復時は内側に接着芯を貼り付け、元の服と自然になじむように複数色の糸を細かく縫い重ね、破れや穴を補修していく。補修しながら色を調整し、縫いすぎて修復部分が硬くなるのを防いでいる。今でこそ「この生地にはこの糸」と感覚で判断できるが、最初の数年は試行錯誤の連続だった。途中で納得がいかなくなり、糸をほどいてやり直すことも多かったという。
ほかにもステッチの位置の再現性や、裏側を見ても当て布が悪目立ちしない仕上がりなど、細かいこだわりは数知れない。古着好きだからこそわかる視点ときめ細かさが、ヴィンテージや古着の愛好家から支持される完成度の高さにつながっているのだろう。
顧客からの信頼が厚いため、破損や劣化が激しい服など、修復が難しいものの依頼も多いという。
「『どう直せばいいんだろう?』と常に悩みます。でも、触れただけで生地が崩れるほど劣化したものや、袖や脚のパーツが丸ごとないもの以外は、大体がどうにかなっている。これまで一番大変だったのは、火事で焼けたデニムの修復です。ボロボロになった繊維を取り除き、状態のいい生地を何とかつないで、お客様に満足していただける仕上がりにできました」
悩みや苦労は尽きずとも、「服と向き合う時間がとにかく楽しい!」と加藤さんは笑顔を見せる。
「ヴィンテージの服の内部や年代ごとのステッチの仕組みを見られるし、希少価値の高いものに触れられるので古着好きにはたまりません。今後も妥協のない仕事を重ね、ゆくゆくは『他店でリペアを断られた服もBlue Championになら任せられる』と言っていただけるよう、最後のとりでのような存在をめざしたいです」
加藤さんの3カ条
| (1) | (2) | (3) |
| お客さま目線で洋服と向き合う | 服が持つ味わいや雰囲気を損ねない | 現状に満足しない |
FRUiT Used&Vintage
板津裕也さん
当店で扱う古着のリペアを依頼しています。ヴィンテージならではの味わいを生かしたリペアをしてくださる唯一無二の存在。一点ものの服も安心して任せられます。明るく気さくな人柄も魅力です。
文/編集部 写真/松浦幸之介