開発試験・品質保証|春多 洋佑
春多 洋佑
品質保証本部 品質保証統括部 システム試験部 AHS・ソリューショングループ
2013年入社
「実際にどう動くか」の経験則を駆使して
現場に即したシステム評価を下す
システムエンジニアが、職人技術者の世界へ
鉱山で使用する、リジットダンプトラックという建機があります。タイヤ直径が3mもある巨大なダンプカーで、日立建機製の特長は電動であることです。私の仕事は、そのシステムが問題なく安全に作動するかを客観的に見極めて、正しく評価することです。最初の配属は車体そのものの評価を下す部門でした。学生時代に電気系を専攻していたこともあり、システム視点を持つ技術者として配属されたのです。車体の評価は経験がものをいう職人気質の世界。システム上で不具合があった時に上司へ説明するのですが、ダンプをほとんど運転したことがない私のような人間だと不具合の説明がわかりにくくなるため、その都度指摘を受けていました。しかし、同じグループのシニアエンジニアの方に助けていただいたのです。その方もシステム評価の理解を得るために苦労していたのですが、周囲から信頼を集めていました。評価方法のポイントを教わり、学生時代の知識も動員しながらシステムに関する議論を通していくことで、上司からもシステム評価を任せられるようになりました。会社では自分一人だと上手くいかないことがたくさんあります。そういうときこそ遠慮なく先輩方の力を借り、経験を積むことが、信頼を得ていく近道だと学びました。
お客さまからの“生の評価”に触れる
当初は車体システムのみの評価でしたが、やがて車体の開発評価担当も任せられました。車体の運転を通して、システムだけでなく実際の車体や機器の動きを学べたのです。その経験はシステムの評価観点にもフィードバックできたと思います。システムの専門家の思考はどうしても机上の空論になりがちですが、車体そのものも学べたことは大きな財産です。実際に自分が評価した車体とそのシステムについて、お客さまからすばらしいと称賛いただけたことがありました。ダンプトラックはおもに海外で稼働しており、お客さまからの車体の満足度に関する情報は耳に入ってきません。たまたまアフリカで稼働しているダンプトラックのトロリー仕様機の実働測定する機会に巡り会えました。助手席に載せてもらい、顧客現場でのトロリー走行も体験しました。トロリー走行中は架線からの電力で走行し、エンジン回転数を下げつつ発電機より多くの電力を使えるので、騒音が小さく、高速で斜面を登坂できます。同乗していたオペレータの方から、「トロリー走行中は静かでスムーズに坂道を走れ、素晴らしい」と褒めてくれたときは、本当に感激しました。自分が評価したシステムで不具合を可能な限り見つけ、最終的にお客さまの満足につながっていると実感でき、この仕事のやりがいを再認識できたように思います。
知識に加え、経験も求められる評価作業
こういった経験を経て、現在は新設のシステム試験部に所属しています。部署のタスクはソフトウェア単体評価と、それらが複数接続された状態でのシステム評価です。実験室ではどうしても理論に終始することがあり、オペレータ目線での評価がないがしろになってしまうケースがあります。私の経験上、車体運転の経験がないと、よりよいシステム評価ができません。そのため、実際に車体を操作する機会をチームとしてさらに増やせないかを模索中です。
基本性能もさることながら、トラブルなく稼働できる信頼性も求められます。オペレータの思い通りに各機能が動作し、警報や故障の誤検出が発生しないことを事前にしっかりと評価することがシステム試験部の責務。これらのトラブルを抑制することで、顧客やオペレータからの製品に対する満足につながるわけです。そのためには、ソフトウェアのみならず、ハードウェアである車体にも精通していることがとても重要です。とりわけ近年のソフトウェア開発はデータ上の計算だけで試験から評価までを完結できる"モデルベース開発"に移りつつあります。いわば、車体がなくても検証できる世界が訪れるのです。だからこそ、車体そのものへの理解と経験が求められるわけです。過去のノウハウに個人の経験や知識を総動員し、いかにバグを見つけられるか。それが、この仕事の醍醐味ですね。