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CEO メッセージ

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 当社グループは今、新しい価値創造の現場に立っています。グローバルに活躍する開発人財の育成こそが、当社グループの未来を支える原動力であると、私は考えています。こうした考えのもと、当社グループは北米・南米における事業の成長を見据えて、技術系・技能系双方の人財基盤を強化することを最重要課題と位置づけて取り組んでいます。 【インド開発会社が狙う製品価値とコスト構造の最適解】  私は以前から、当社グループの開発力を真にグローバルなものへ進化させるには、日本中心の体制では限界があると感じていました。より広い感性とニーズに根ざした開発力の確立こそが、真に強いグローバル組織への道だと考えています。その想いを形にすべく、2025 年1 月に、日立建機開発センターインドを現地に設立しました。これは単なる海外開発拠点の増設ではなく、日本とインドの開発メンバーが一体となり、日本人開発者は、言語や習慣の違う人たちと顔を突き合わせて仕事をすることで国際感覚を習得し、インド人開発者は、日本の精緻な性能や品質に対するこだわりを学ぶということです。インドと日本両方の開発者が協働して、製品開発を進めていく中で、それぞれの人としての厚みを増してくれればと思っています。  私はこの取り組みを通して、多様な文化や課題認識が交差することで生まれる新たな創造力と、多様性がもたらす相乗効果に期待しています。当社がめざすのは、持続可能な製品開発体制の構築です。中でも、私が重視しているのは、異なるバックグラウンドを持つ開発者同士が刺激を与えあい、互いに誇りを持って取り組める環境づくりです。そのため社長の先崎や副社長の梶田と共に、現場の声を丁寧に拾い上げて、マネジメントの立場から、日本の開発チームにも多様性の重要性を伝え続けてきました。これは決して理念ではなく、私たちの確信に基づいた行動です。  日立建機開発センターインドの役割は、インド市場向けモデルの開発を行うことではありません。日本の基幹開発に関与し高精度な設計力を活かしつつ、インド現地の創造性を組み合わせ開発力の厚みをさらに増すことで、製品価値とコスト構造の最適解を生み出すことにあると、私は期待しています。 【多様な人財が現場で力を発揮できる環境と仕掛け】  技能領域においても、現場で多様な人財が活躍できる環境づくりを進めています。私たちが生産している製品は、多くの部品が重くて大きく、女性や年齢の高い人には向かない職場という意識がありました。しかし、この固定観念から脱却するために、さまざまな取り組みを進めており、近年グループ全体で年に1回開催している国際技能競技会では女性従業員を対象とした組立のプレ大会を新たに立ち上げました。この取り組みによって、工具の重さや作業台の高さといった、従来見過ごされていた課題が現場から吸い上げられ、実際に設備や作業環境の見直しにつながっています。この結果、多くの組立ラインでは複数の女性従業員が日々成果をあげており、その事実が多様性を活かす仕組みの有効性を裏づけています。さらに、「組立作業は若い人が中心の職場という固定観念」にも挑んでいく考えです。今では、50歳以上の熟練技能者を対象とした新たな大会の開催も視野に入れており、年齢にとらわれない多様な活躍の場づくりも模索しています。  こうした現場起点のさまざまな改革は、私たちマネジメント層が現場に足を運び、現場の声に耳を傾けながら、その声を改革に反映させていくという覚悟があってこそ実現します。私は、従業員一人ひとりが「自分の力で会社を動かしている」と実感できるような“場”を提供することこそが、持続的成長の礎になると見ています。その気づきと成長の連鎖がつながることで、当社グループの未来を切り拓く原動力になることが期待されます。

 私は取締役会議長として、当社グループの経営ガバナンスをより実効性の高いものにするべく、バランスの取れた議論の場づくりに力を注いでいます。執行役としての発言はCOOの先崎やCFOの塩嶋に主に委ねており、私は取締役会議長としての中立性を保ちつつも、戦略的な視点から取締役会をリードしています。ここにおける私の強みは、執行の一員としても現場の実態をよく理解していることであり、ここからの課題を取締役会の議題に上程もしています。この立場を活かして、単なる執行役会の結果報告にとどまらず、中長期的な経営課題や戦略的テーマを積極的に議題に取り上げています。 【取締役会と執行の相互理解を深める取り組み】  2 年前の実効性評価から得られた意見を取り入れ、昨年は「人財育成」「事業ポートフォリオ」「サステナビリティ」などをテーマに、社外取締役を交えて率直な議論を行いました。私は、こうした議論を通じて取締役会と執行の相互理解を深めることに努めており、多角的な視点で経営課題を検討できる環境を整えています。取締役会や意見交換会で出た意見や提言は、私が責任をもって執行側に伝えており、戦略や制度設計に反映しています。  この観点で役員報酬制度の見直しを行い、成果連動制と透明性の向上も図っています。また経営陣が長期的な企業価値向上を意識して行動できるよう、中期経営計画に基づく利益目標といった財務KPI に加え、サステナビリティ要件である非財務KPI も報酬制度に組み込んでいます。さらに、2024 年度も実効性評価を実施しており、取締役会の役割や構造の見直しが議論されました。  私はこうした声を、ガバナンス高度化をめざすにあたって歓迎しており、ガバナンスも時代や経営環境に応じて柔軟に変化すべきと考えています。固定的な枠組みにとらわれず、常に最適を追求する姿勢こそが、当社グループの持続的成長につながると確信しています。 【すべては、企業価値の持続的な向上のために】  企業価値は、単なる業績の向上だけで語れるものではありません。私たちは、株主に対しては透明性の高い経営と説明責任を徹底し、従業員には働きがいと正当な報酬を提供し、取引先とは信頼に基づいた関係性を維持しながら、お客さまには確かな成果を届け、地域社会には持続可能な形で貢献することこそが、企業価値の本質であると考えています。これらをバランスよく統合し、ステークホルダーの皆さまからの信頼を着実に積み重ねていくことが、私たち日立建機グループがめざす企業価値向上のあるべき姿です。  これからも、私たちは多様なステークホルダーと対話を重ねながら、あるべき姿を共有し、社会からの信頼を築いてまいります。私はその基盤づくりを担う立場として、引き続き真摯に取り組んでまいりますので、今後ともご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。