2万5千人の従業員が固く結束し、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能で豊かな社会の実現に邁進します。
執行役会長兼CEO
平野 耕太郎
社長に就任した2017年からの6年間で成し得た最も大きな出来事は、やは り、北中南米(米州)事業の独自展開と資本構成の変化です。米州独自展開は、 社長就任の当初から、なんとか私が社長の間に必ず成し遂げたいと考えてい た事柄でした。また、資本構成の変化は、米州独自展開とは別々に進んでいた 案件ではありましたが、私の頭の中では一つの事柄として捉えていました。今回この二つの案件が、同じ年の中で新たなスタートを切ることができたことは、事業を進める上でも非常に良いタイミングでした。
日立建機の米州事業は、製品の開発や製造を我々が受け持ち、パートナーである米国農機大手であるディア&カンパニー社(以下、ディア社)が、販売やサービスを受け持つという展開をしてきました。1983年来の非常に長いお付き合いですが、市場環境やお客さまの課題が大きく変わる中で、両社の関係を見直さなければ、これ以上の事業の発展は難しいと、大きな危機感を持っていました。お客さまの課題は大きく変化し、工事現場の安全性や生産性の向上、 燃費などのコストの低減、環境対応などに対して、メーカーはどのように対応してくれるかなどの要求が強まってきています。これらの課題を解決するためには、機械の稼働データから最適な答えを見つけ出し、お客さまに最適なソ リューションを提案しなければなりません。要するに情報とその活用によりお客さまの課題を解決することが重要なのです。そのためには、世界最大の市場である米州の販売とサービスをディア社に任せるのではなく、我々自身が直接代理店やお客さまとつながることが重要なのです。このような理由から、今後はそれぞれが独自の事業戦略によって成長をめざすことが望ましいと判断したわけですが、業務提携をどのように解消していくかには、相当の準備が必要でした。交渉がスタートした当初から、非常に限られたスタッフで、毎日のように、さまざまな検討に時間を割き、交渉にあたってきました。
ディア社との関係は、OEM供給の関係から始まり30年の長きにわたり続いてきましたので、我々が今回の提携解消を何らかの交渉の材料として持ち出したのではなく、本気なのだとディア社に理解してもらうまでには時間がかかりました。実際、相当大変な交渉で、もし合意が得られなければ、しこりを残したまま提携を継続しなければならないという状況でした。交渉は困難を極めましたが、何度も話し合ううちに「お互いがグローバルに発展するには、この関係をいったんクリアにしなければならない」ということを理解してもらいました。
そして、「もし提携が解消になったとしても、当社が開発し、パートナーのディ ア社が販売とサービスを提供してきた製品を使ってくださっている代理店やお客さまに絶対に迷惑はかけない」というこの一点に両社が合意できてからは、話がどんどん先に進んでいきました。もちろん、交渉ですから、話が合わない局面が出てきます。その時は、この原点に立ち戻って調整できたことが大きかったと思います。そして、2021年8月に最終的な合意ができ、2022年2月28日付で合弁を解消しました。困難な交渉を乗り越えたことで、私たちにとって長年の悲願といえる世界最大の建設機械・マイニング機械市場への挑戦につなげることができたわけです。
一方、資本構成の変化は、(株)日立製作所(以下、日立製作所)が保有していた当社株式51%のうち26%分を、日本産業パートナーズ(株)と伊藤忠商事(株)が折半出資する「HCJIホールディングス合同会社」※1に譲渡し、同社が筆頭株主になるというものです。日立製作所がグループ再構築を進める中で、我々と日立製作所は、建設機械・マイニング機械ビジネスの成長戦略に関して幾度も議論を重ねてきました。機械の稼働情報を活用した製品・技術・サービスをタイムリーに直接お客さまに提供できる体制を米州で独自に構築することは、当社の大きな課題であって、この実現が当社の成長戦略であることを、日立製作所も支持してくれました。
日立グループにとっての建設機械・マイニング機械ビジネスは、売上高、利益はグループ全体の目標を上回っているものの、貸借対照表(以下、BS)で見ると非常に重たい。これは機械の単価が高額であることや我々が進めているバ リューチェーンビジネス(サービス、部品、レンタル、中古車、再生などの事業)の推進にあたっては、我々自身が資産を保有しなければならず、必然的にBSが重たくなります。世界最大の市場である米州で独自展開していくには、広大な国土をカバーする複数のサービス拠点、製品や部品の在庫、独自のファイナンスを用意しなければなりません。こうした成長資金をどうするのか。BSを軽くしたい日立製 作所の意向と、成長資金をある程度自由に、機動的に投じたい当社の意向を踏まえ、出資比率を変更することになりました。
その一方で、建設機械・マイニング機械の遠隔監視ソリューション「ConSite」は、日立製作所が推進する、データからデジタル技術で価値を生み出し、課題の解決や事業の成長に貢献する「Lumada」※2をまさに体現するサー ビスソリューションであり、このほか技術的にも強いつながりを持つことから、日立製作所の持分法適用会社として日立ブランドを継続使用します。
2022年3月から米州事業の独自展開を開始し、同じ年の8月という非常に良いタイミングで資本構成の変化を発表することができました。
※1 HCJIホールディングス合同会社:現HCJIホールディングス株式会社
※2 Lumada:日立製作所の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称