COO メッセージ

LANDCROSを軸に、世界中のお客さまと信頼関係を深化させて未来を拓く成長ストーリーをステークホルダーへ発信します。
代表執行役 執行役社長兼取締役 COO
先崎 正文
私は、ステークホルダーの皆さまに、日立建機グループが毎年着実に成長していると実感していただくことが、COOの使命であると考えています。なぜ、私たちは成長を続けられるのか。その答えは「お客さまの期待に応え、革新的な製品・サービス・ソリューションを協創し、ともに新たな価値を創造し続けます」という、揺るぎない日立建機グループのミッションにあります。当社は建設機械のフルラインアップこそ持ちませんが、油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダといった中核製品で、世界に誇る強みを有しています。70年以上にわたり磨き上げた技術の結晶が、今も世界の建設や住宅、鉱山現場を支える核となっています。この核となる技術力をもとに、今後はパートナー企業が加わることで、「革新的なソリューションで世界一」をめざして進化を続けていきます。ここで、「この会社は本物だ」と感じてもらえる確かな実績を積み重ねて、株主・投資家の皆さまの信頼に応えていくこと、それが当社グループのめざすエクイティストーリーの核だと、私は認識しています。
この挑戦をさらに加速する旗印が「LANDCROS」です。これは単なるコンセプトではなく、我々独自の成長ストーリーそのものであり、本体技術の進化、オープンなパートナーシップ構築、デジタル基盤強化を通じた、革新的なソリューションによるエコシステムをも生み出しています。世界最大級の国際建設機械見本市「bauma 2025」では、コンセプトモデル「LANDCROS One」を初披露し、来場した皆さまから高い評価を得ました。
エコシステムの中核を担うのが、「LANDCROS Connect 」と「LANDCROS Connect Insight 」です。前者はメーカーや業種を問わず多くの機械を保有するお客さまに向けた資産管理システムであり、稼働状況やCO2排出量といった情報を他社機も含めて一元的に把握・分析し、施工の最適化を強力に支援します。後者はその上位サービスとして鉱山現場に特化し、リアルタイムの稼働データを基に異常の早期検知を実現しながら、稼働率の最大化とメンテナンスの最適化を可能にします。これらは、単なる管理機能ではなく、現場の生産性を飛躍的に高める革新的なソリューションです。今後はパートナー企業の拡大と地域基盤拡大の両面から、持続的な成長モデルを築いていきます。
ここ数年、当社グループはLANDCROSの基盤となる米州独自展開のテリトリー拡大、バリューチェーン事業の構築を進めてきました。本体機械も含めたテクノロジーカンパニーへ進化をするべく、LANDCROSを旗印に、未来に向かって力強く成長する姿を、すべてのステークホルダーの皆さまに伝えていきます。
【オープンな仲間づくり~連携と拡張の加速に向けて】
当社にとって、LANDCROSのパートナー企業は単なる取引先ではありません。共に未来を切り拓く、かけがえのない仲間です。だからこそ、パートナー企業の選定において最も重視するのは、企業文化の共有です。当社グループが大切にしてきたのは、お客さまの成功や利益を最優先に考えて、そこから代理店、私たち自身も共に繁栄していく「協創の循環」という文化です。この精神に共感し、オープンな情報交換を惜しまない企業こそが、真のパートナー企業であり、“LANDCROSファミリー”を広げる存在になると考えています。
かつてはクローズド戦略も選択肢にありましたが、我々は挑戦者としてあえてオープンなイノベーションを選びました。LANDCROSはその象徴です。異なる技術や価値観を持つ仲間と交わりながら、かつてないスピード感で新たな世界を創り上げていきます。 2024年5 月に千葉県市川市に開設した「ZERO EMISSION EV-LAB」では、いすゞ自動車や伊藤忠商事、九州電力などのパートナー企業とビジョンを共有し、多くの企業・組織がゼロ・エミッションに共鳴して集結しています。「LANDCROS Connect 」は、複数のパートナー企業と組んだアジャイルなチームにより、オープンソースを使い、短期で開発を進めたものです。アジャイルな開発手法とオープンな技術基盤のもとで、イノベーションをスピーディーに重ねることが、これからの時代に求められる競争力の源泉になると当社は確信しています。
当社グループは成長と資本効率の向上が期待されるLANDCROSを軸にして、仲間づくりと市場拡大の両面に本気で取り組み、必ずや新たな価値創造を実現してまいります。
【お客さま起点で育むLANDCROS ~信頼を深化させる企業文化】
当社は今、LANDCROSの成長性を確かなものとし、この理念が形骸化しないように、KPI(重要業績評価指標)の策定に着手しています。従来の売上や契約台数といったKPIに加えて、たとえばLANDCROSによる「顧客現場の改善度」「稼働の最適化」「CO2削減効果」という新たな価値基準を設定するなど、価値創出を“見える化”することで、この理念が確かな実行力と成果につながる循環を生み出していきたいと考えています。
ここで私たちが中心に据えるのは、「お客さまとのつながりの深さ」を定量的に可視化し、成長の原動力とすることです。 稼働台数(ポピュレーション)の拡大、部品・サービス捕捉率や営業リピート率の向上といった指標を設定し、お客さまとの信頼関係の深さを客観的に把握できる仕組みを整えていく考えです。これらの数値は単なる業績管理指標ではなく、どれだけ誠実にお客さまと向き合っているかを示すものになると私は考えています。
当社は創業以来、「お客さまの課題と正面から向き合い、真摯に対応する」企業文化が根付いています。世界を代表する大手ゼネコンや鉱山会社から、新興国の小規模な建設会社、1台の機械を保有する個人オペレータに至るまで、すべてのお客さまに同じ姿勢や誠意で寄り添ってきました。この営業活動スタンスは当社の競争力の源泉であり、LANDCROSが具現化する新たな価値創造そのものです。当社はデジタルテクノロジーの進化によって、この仕組みを一層強化できるとみています。最新のデジタルツールを活用することにより、より迅速かつきめ細かなサポートが可能となり、一人ひとりのお客さまへ対応の密度も高まることが期待されます。すでに、我々は世界の半分近くの市場で直接販売サービスを展開しており、今後はLANDCROSを核として、直接販売・サービスおよび代理店による販売・サービスの双方で「お客さまの声」の収集・反映をさらに進化させていきます。ここで当社グループがめざすのは、お客さまにとって最も身近で、最も信頼されるパートナーであり続けることです。LANDCROSを軸に、世界中のお客さまとの信頼関係を深化させながら、未来を拓く成長ストーリーを力強く歩んでまいります。
【独自の油圧技術を他社にない付加価値へ】
こうした一連の挑戦を支えるのが、約60年にわたり磨き上げた、我々独自の「油圧技術」です。エンジンやモータが生み出す動力を油圧に変えて、「走る」「掘る」「持ち上げる」といった現場作業を支えるこの技術は、当社の機械が「操作性に優れて、環境負荷が小さい」と評価されるゆえんでもあります。流量を繊細に制御し、オペレータに快適な操作感を提供しながらエネルギーロスを最小限に抑えています。力強さと繊細さを高度に両立させる油圧制御こそ、当社のコアコンピタンスです。さらに、「掘る」以外のアタッチメントやマテリアルハンドリング、ドリリングマシンといった多様な応用開発製品群にも、独自の油圧制御技術を生かしており、他社にない付加価値を提供しています。
中期経営計画(BUILDING THE FUTURE 2025 未来を創れ)の2年目を振り返り、当社は部品やサービスなどのバリューチェーン事業において確かな成果を実感しています。これで収益基盤の底上げが進み、安定成長に向けた一歩を確実に踏み出せました。中長期的には、新車市場についてもインフラ・都市開発の需要を背景に成長トレンドが続くとみています。短期的には、需要環境による新車減少の影響もある中、バリューチェーン事業による利益基盤の強化、在庫管理精度の向上といった地道な取り組みが着実に効果を上げていて、収益下支えの重要性が増しています。
【地域戦略と資本収益性の向上について】
一方、2025年度の中期経営計画の数値目標達成に向けては、課題も見えています。特に、米州地域の独自展開では、売上収益3,000 億円の目標達成を1 年先送りする決断をしました。今後の地域戦略は、北米だけでなく中南米へも視野を広げて、地域ポートフォリオの多様化によりリスク分散と成長を両立させていきます。中央アジアやインド市場でも着実にプレゼンスを高めつつあり、将来の成長軸となる地域で基盤を強化しています。オープンな連携を活かして、現場に深く根ざす戦略で存在感を高めていきます。
資本収益性の向上は、今後の成長加速と合わせた重要な課題です。ROE を含む資本効率指標を高めることを目標に掲げつつ、未来を見据えた成長投資も着実に進めます。研究開発費についても、一定の比率を維持し、将来の競争力強化を目的に、戦略的な投資を継続します。その中核となるのが、コア製品群のシェア拡大と稼働台数(ポピュレーション)の積み上げです。加えて、営業リピート率の向上や部品・サービス捕捉率の拡充により、付加価値を高めた高収益ビジネスモデルへの進化を図っていきます。こうした進捗や課題は、株主・投資家の皆さまに丁寧かつオープンにお伝えしています。