人財育成
人財育成方針
お客さまや社会からの要求が変化し、その変化も劇的に加速する中にあって、会社はさまざまな変革に自ら対応し、社会に貢献し続けなければなりません。それらを牽引する従業員の幸せと会社の持続的成⻑を実現するうえで、人財育成は経営の最重要テーマの一つです。
「一人ひとり自らが「学び」「育つ」風土を作り、「新たな価値創造」「変革への挑戦」「社会への貢献」に資する人財(Kenkijin)を育む 」というビジョンのもと、わたしたちは2030年にむけて「地球上のどこでもKenkijinスピリットで、身近で頼りになるパートナー」として全世界においてReliable Solutionsを提供し、快適な⽣活空間づくりを通じて社会に貢献し続けていきます。
教育体制
CEOを委員長とする全社教育推進委員会の統括のもと、「経営管理」「技術・技能」「営業」「サービス」の区分で、各部門に設けられた教育委員会が人財育成に関連した施策を推進していきます。また、それぞれの部門を通じてグループ会社に対する人財育成推進サポートも行っていきます。
経営リーダー育成については、日立建機および国内外グループ各社の人財を対象に、ワークショップやディスカッションを通じて変革の時代をリードする強いリーダシップを醸成する、社内外複数のプログラムを実施しています。
教育制度
日立建機では、国内外を問わずグループ会社も網羅して階層別・専門領域教育と選抜型・選択型教育を行っています。(図:階層別教育体系)
階層別教育は、新入社員から管理職まで各階層の社員に求められる能力やマインドを身に付けるためのもので、人財開発統括部が該当する全社員を対象に実施します。特に若手層には社会人基礎力を修得する研修を実施します。(図:ビジネス基礎研修プログラム)
また、会社の方針やグループアイデンティティ、コンプライアンス、情報セキュリティなどの研修は契約社員や派遣の方も対象に実施しています。
専門領域教育は開発・生産・営業・サービスの職務別に求められる能力を習得するための研修です。営業・サービス専門教育は、販売代理店強化のための研修(マーケティングセールスサポートプログラム研修(MSSP研修))、サービス技術においては、研修、認定制度を備えた、サービス技術認定制度を行っています。
これらの教育は、霞ヶ浦総合研修所(人財開発統括部管轄)、技術研修センタ(サービス教育部管轄)等で実施しています。霞ヶ浦総合研修所、技術研修センタでは、教室の他に、実習用の工場、実習機、宿泊施設(霞ヶ浦総合研修所のみ)を備え、新入社員への技能研修から幹部養成までを行うとともに、海外からの研修生の受け入れも行っています。
従業員一人ひとりの成⻑を支える学びの基盤として、デジタル技術を活用した教育環境の整備を進めています。特に、e-Learningは知識習得や研修後の復習を効率的に行える手段として位置づけられており、現在では全体の学びの約80%を占めるまでに拡大しています。この取り組みは2015年度半ばから日立建機本体で開始され、国内外のグループ会社(2018年度~)、独立系代理店(2019年度~)へと順次展開され、現在も利用企業の拡大を継続しています。
e-Learningの提供にとどまらず、学習管理システム(LMS)として集合研修の受講受付や開催案内など、講座運営全体にも活用されています。さらに、上⻑が部下の育成計画を立て、必要なプログラムを選定・受講できる仕組みを整えることで、より個々人の成⻑に焦点を当てた教育が可能となり、社員の学習意欲が高まり、教育プログラムの実効性も向上しています。
このような仕組みにより、日立建機は組織全体として持続的な人財育成とスキル強化を実現し、世界中のKenkijinが卓越した技術力を基盤に、一歩先を行く提案・サービスを提供することで、世界のお客さまの経営に貢献する「身近で頼りになるパートナー」となることをめざしています。同じ価値観を持って行動する社員の育成を通じて、グローバルに通用する人財の育成にも力を入れています。
自律的なキャリア形成の支援
急速な技術革新や価値観の多様化が進む中、社員が自身の強みや価値観を踏まえて、自律的にキャリア開発に取り組み、成⻑を実感できる環境を提供することが、企業の持続的成⻑に不可欠と考えています。
当社は、社員のキャリア支援を行うため、2024 年より、専門知識を習得し資格を取得した専属のキャリアコンサルタント 4 名によるチームを新設しました。このチームを中心に、意識調査による実態把握と対策立案や個別のキャリアコンサルティング面談、年代別のキャリア研修などを通じて、社員の自己理解と行動変容を促進しています。
研修・面談の満足度は高く、前向きな挑戦やスキル習得への意欲向上が見られます。今後は、製造技能職や国内グループ会社へも支援対象を拡大して、多様な人財が活躍できる組織風土を醸成し、人的資本の価値向上を一層推進していきます。
また、当社では定年60歳から65歳までの雇用延長制度(シニア社員制度)がありますが、人生100年時代を鑑みた自分らしい豊かなライフ・キャリアプランを検討するにあたり、公的制度や定年制度・シニア社員制度等の内容を正しく理解し、デザインする必要があります。これに対応したシニア社員向けのキャリアデザイン研修などもキャリア支援の一環として行っています。
<研修事例>
グループアイデンティティ・Kenkijinスピリットの浸透 -グループ共通文化醸成プログラム
2022年に新たにグローバルでのグループアイデンティティが制定され、各部門での行動規範であるKenkijinスピリットが見直されたことに合わせ、グループグローバル全社員を対象とした教育プログラム(対面研修、e-Learning)を展開してきました。日本語を含め11か国語でのプログラムを提供し、2025年の8月までに全世界の従業員の97%が受講を完了しました。
グループグローバル共通ワークショップ-自己変革プログラム
変革の時代を勝ち抜くための組織風土を作ることを目的としたワークショップ「自己変革プログラム」をグループグローバル全社員向けに展開してきました。このワークショップは、日立建機グループ共通のビジネス基礎力概論で、業務遂行に必要な基礎力に関する5つのプログラム(16 項目のトピック)で構成しており、社内講師により実施しています。
現在、日立建機単独では経営層を含めた対象者への受講計画は完了しており、現在は海外グループ会社を中心に展開を進めています。海外グループ会社内でも社内講師の育成が進み、海外の7拠点で110名の講師が誕生し、各社内でも教育体制が定着してきました。2025年3月末までの受講者はグループ全体で6,871名(うち、2,366名海外グループ会社)となりました。
マネジメント・リーダーシップ研修
各階層(職位)の役割と責任を明確にし、効率的な業務遂行と意思決定ができるよう、階層別に1 年次~ 6 年次、新任主任、新任課長、新任部長への研修を行っています。2023年度より、マネージャー層にはコーチングスキルの研修を必須とし、部下の成長を支援するとともに、チームとしてのパフォーマンス向上をめざしています。
また、グループ・グローバルなリーダーを戦略的に育成するための体系を整備し、期待される役割を定義した上で、必要なスキル・マインドを身に付けることができるプログラムを提供しています。例えば若手向けには、経営戦略・マーケティング・アカウンティング、ファイナンスなど、MBAの基本領域を身に付けることができるコース、課長層・部長層にはビジネスリーダーとして必要な知識・スキル・マインドを習得できるコースの受講を必須としています。
さらに、各国のリーダー人財が対面で集合し、ディスカッションと提言を行うグローバルリーダー研修も実施し、変革をリードしビジネスの成長につなげることのできる人財の育成強化に努めています。
デジタル人財育成
急速な技術革新への対応や経営戦略の実行のため、デジタル人財の育成とリテラシーの向上に取り組んでいます。国内では、2022年度から2023年度末までをデジタル人財育成の強化期間とし、デジタルリテラシーに関する研修を実施するとともに、業務部門とDX部門でチームを組み、実践を通してデジタル推進リーダーを育成するプログラムも実施し、受講者は合計で1,152名となりました。
さらに2024年度からは、これらのプログラムに加え、全部門共通で必要とされるデジタル専門スキルをもった人財の育成を促進するため、プロジェクトマネージャーとデータサイエンティストを育成するプログラムを開始し、資格取得などの実績が出始めています。
営業・サービス研修プログラム
営業教育については、最前線で販売サービスを担う、販売代理店強化のための研修プログラムを2013年より、各地域の販売代理店向けに展開しています。
サービス技術においても、メカニックの技術力向上、サービス品質の均一化を目的としたサービス員養成の研修、認定制度を備えた日立建機サービス技術認定制度を各地域の代理店向けに展開しています。2025年6月末時点、世界36カ国73の代理店にて2,135名が当制度の認定を受け、日々のサービス対応を行っています。(サービステクニシャン1,399名、リペアテクニシャン588名、プロテクニシャン4名、インストラクタ144名)
コミュニティ活動
全社での生成AI活用を加速させることを目的に、生成AIコミュティを作成し、活動を行っています。
希望する従業員はだれでも参加でき、オンラインでのコミュティ内では、生成AIの最新動向や、現場業務に活かせる生成AIの活用方法についての情報交換を専門家を交えて行うことができるほか、対面のワークショップなども開催しています。
ビジネスコンテスト
新しい事業にチャレンジしたい人たちがチャレンジできるようにすることと、日立建機グループ内の新しい事業のタネ・立ち上げられる人を探し、事業化まで結びつけることを目的とし、ビジネスコンテスト「KENKI βUSINESS CHALLENGE」(以下、KβC)を開催しています。新しいチャレンジが評価される文化の醸成を図る本取り組みは、2022年度から年に一度、国内の日立建機グループ直接雇用者約9,000名を対象に大々的に開催しており、現在は3回目を実施しています。
応募期間の取組みでは、KβCへのエントリーの有無に関わらず参加することが可能なワークショップや講演会といった各種イベントを開催しており、多くの方が新事業に関わる基本的な考え方などを学ぶことができます。エントリー後の書類審査を通過した参加者は、事業化のプロによるワークショップ・メンタリングによる指導のもと、事業開発のスキルを学びながら事業案をブラッシュアップすることができます。
第1回、第2回のKβC本審査を通過した合計4チームが、現在、自分たちのアイデアの事業化を目指して専任で活動しており、KβCの開催は、新事業や新しい物事を自律的に推進できる人財を全社的に増やすことに貢献しています。また、ブラッシュアップ期間の交流を通じて、所属会社・部署の壁を超えてチャレンジ意欲の高い社員同士のネットワーキングの機会を創出し、グループ会社含めた人財の活性化に繋がっています。
なお2025年度も9月開催の本審査に約10チームが挑むことになっており、新たなチャレンジャーが、これからの日立建機グループを支える新しい事業の立ち上げをめざしていきます。
人財育成に関するデータ
社員一人あたりの平均教育時間、教育投資額