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2010年に日立建機の10年後のあるべき姿を描いて発表した「2020VISION」。その第2ステップとなる新中期経営計画(以下、新中計)がまとまった。掲げたスローガンは、「GROW TOGETHER 2016」。

変化の激しい建設機械市場において世界中のお客様に選んでもらえるグローバルカンパニーとして、第1ステップで芽吹いた芽をしっかり根づかせ、太い幹に育てていくための施策を意欲的に盛り込んだ。
2020年のあるべき姿に向かって、そしてその先へ――。

ギアを上げ、アクセルを踏み込んだ執行役社長の辻本雄一に聞いた。

- 2012年、木川理二郎前執行役社長から託された2020VISION。その実現の“地固め”と位置づけていた中期経営計画「Go Together 2013」が終わりました。どのように評価していますか。

辻本:うまくいったところと、計画通りにはならなかったところの両方がありますが、第1ステップとなる前中期経営計画(以下、前中計)で掲げた「持続的成長を可能にする地固め」は実現できたと思っています。

前中計の策定時は、新興国を中心に世界の建設機械需要が順調に拡大すると予想していましたが、2011年度、2012年度と需要が減少し、3年間の売上高などは予想ほど拡大しませんでした。強化事業と位置づけたマイニング市場は、日立グループシナジーを存分に発揮したマイニングダンプトラックのシリーズ化を進め、2011年度、2012年度は順調に売上を伸ばしましたが、最終年度である2013年度は、新興国の経済成長の鈍化を受けて資源価格が下落、これによって大型投資が控えられ、マイニング事業の売上は低調な結果に終わりました。

そのような市場環境の中でも、次の一手につながる地固めを行ってきました。

部品・サービス事業では、製品のライフサイクルサポートの観点から諸施策に取り組みました。例として、世界中の当社建設機械の稼働状況を管理する「グローバルe-サービス」を活用し、故障リスクを低減させる情報を提供する「ConSite<コンサイト>」など、ICTを使ったサービスを開始し、また、コストパフォーマンスを高めた日立セレクトパーツの開発などを行いました。

このほか世界中のお客様のニーズを的確につかみ、情報を収集・分析するための開発マーケティング体制や、地域の市場情報と販売プロセスを見える化する代理店支援プログラムの構築に着手し、今後更に充実させていきます。

また新興国市場であるロシア、ブラジルの生産工場を新たに立ち上げるなど、世界各地の生産能力を整備しました。サポート基盤として、オーストラリアのマイニングトラック組立拠点、インドネシアのトレーニングセンター、アフリカの部品再生工場なども拡充し、サポート力を高めました。今年4月には、茨城県つくば市に「つくば部品センタ」を開設、保守部品の物流全般を、日立物流に3PLで委託して、同社の持つグローバル物流管理システムにより、物流コスト低減と併せてグローバル供給体制の効率化・迅速化を図り、グローバルでの部品サプライチェーン体制を強化しました。

日本においては、2012年に日立建機日本を設立し、国内約240拠点を持つ独自のRSS(レンタル・セールス・サービス)体制を確立させました。この体制の意味は大きく、自社グループで製造、販売、サービス、さらにはレンタル、中古車再販までの体制を持つのは国内では当社グループだけです。つまり、製品のライフサイクルのすべてに関わるバリューチェーンが構築されたわけで、このノウハウとICTを駆使して世界各地でバリューチェーンを強化し、お客様の満足を高めながら、収益力の向上をめざします。

製品開発においては、日立グループとの協業を進め、日立建機にしかできない製品を生み出しています。省エネ性能を高めたハイブリッド油圧ショベルや、ACドライブ搭載のダンプトラックなどはその例ですが、同時に自律運転ダンプトラックなどの未来の製品開発もスピード感をもって進めています。さらにはカナダの情報システム会社「ウェンコ」の持つICTを活かし、日立製作所と鉱山運行管理システムのクラウド展開を進めています。これにより、鉱山運営および鉱山機械の管理を最適化する統合した鉱山運営・管理システムを強化していきます。

- 市場環境の大きな変化を受けながらも、さまざまな種が芽を出し、未来に向かって育ち始めているわけですね。この芽をその特性を見極めながらしっかり育てていくことが新中計「GROW TOGETHER 2016」ということになるのでしょうか。

辻本:まさにその意味を込めて“GROW TOGETHER”と名づけています。建設機械市場は中長期的には成長性の高い市場です。ただ短期的には需要は大きく変動することもあります。

前中計では、こうした環境変化に左右されず勝ち残っていく企業体質づくりと、お客様の満足度向上のための建設機械のライフサイクル全体をサポートする体制づくりを進めてきました。

お話ししたことは、その取り組みの成果の一例ですが、新中計では前中計でやってきたことをしっかりと組織化、仕組化する。さらには前中計で積み残した課題や新たに出てきた課題を解決する。それによってバリューチェーン全体を強化し、世界中のお客様に選んでいただくようにしていくことが大きなテーマとなります。

そのために掲げたキーワードは「信頼と差別化」です。

- 企業が存在する根源的要素だと思いますが、それを新中計に具体的な施策として落としこんだということでしょうか。

辻本:はい。この3年間で急激に力をつけてきた新興国メーカーの台頭もあり、市場競争はますます激しくなると考えています。その中で、お客様の「信頼」を勝ち取り、「差別化」できるビジネスモデルをつくりあげることが新中計の中核になると考えています。

建設機械のライフサイクル全体を視野に、お客様のニーズに合致した製品開発から、調達、生産、新車販売までのサプライチェーンの各段階を強化するとともに、ファイナンス、レンタル、アフターサービス、中古車再販などのバリューチェーン全体をICTを活用し、付加価値を高めていきます。

いろいろなお客様に伺っていくと、強く求めているのは機械としての耐久性です。お客様のニーズは多様化していきますが、求められる基本性能は変わらない。基本機能を明確に区別しながら、設計の標準化、モジュール化を進め、地域ニーズにあった製品を日本のマザー工場を中心にグローバルで開発を推進します。

事業効率を高めるために、生産の合理化、清流化を進め、生産リードタイムを大幅に短縮するとともに、世界各地域の生産拠点を有機的に活用し、サプライチェーン改革を進めています。変動が激しい建設機械市場において、グローバルなサプライチェーンマネジメントの改革により、市場変化に素早く対応できる体制をつくっていきます。

市場変化の兆しをキャッチする精度を上げるのがICTを使った情報収集・分析システムですが、それだけでは不十分です。やはりお客様の生の声や、現場の施工方法、排ガス規制のような地域情報を、地道な現場でのマーケティングで集め、一緒に分析してはじめて精度が上がります。

そして、そのニーズを製品化するときに考えるべきは、「何でも自分たちでやるべきか」ということです。つまり時間やコストを考え、自らが持つコア技術と、外部に任せる技術を切り分けながら、オープンイノベーションで開発することが重要になってきます。

その点、私たちには日立グループに蓄積されたICTや電子・電動化に関するさまざま技術やノウハウを利用できるアドバンテージがあります。すでに研究開発やサービスサポートツールの開発などに活用していますが、これに加えて、今後は国内外の研究機関やベンチャー企業などとも積極的に提携し、差別化した製品・サービスの開発力を高めていく予定です。

もちろん私たち自身も革新的なモノづくりを追求していきます。話題となった双腕仕様機「アスタコ」などは、その例かと思いますが、その発想の原点は、人間の両腕で作業をするかのごとく、建設機械を動かせるようにと地道に研究してきた成果です。そのようなヒューマンベースの技術開発も私たちの強みであると考えています。

バリューチェーン全体の強化

- 2013年度までの3年でさまざまな種が芽を出し、これから3年で大きく育てながら、次の種をまき、2020年には深い根を張り、太い幹の樹に育ち、大きな実がなる樹になりそうです。やはりその原点は人づくりとなってきますか。

辻本:はい。技術だけでなく、私たちがお客様の信頼、社会の信頼に応えて成長を続けるためには、人づくりは大きな鍵を握ってきます。

当社グループでは前中計から現地の幹部候補生を養成する「サクセションプラン」をはじめ、現地化を進めていますが、新中計ではさらに階層別・職能別の教育・研修制度の拡充と、当社グループ共通の価値観である「Kenkijinスピリット」の体現化をめざし、海外に教育拠点を展開していきます。同時に資格認定の仕組みづくりも進めています。

また、ダイバーシティ活動を推進することで、多様なアイディアを出し合い、世界中のKenkijinがコラボレーションできる環境づくりが企業の競争力向上につながると考えています。Kenkijin一人ひとりが、「2020 VISION」の実現に向かって、チャレンジし続けます。

こうした取り組みのすべてが、メーカーとして最も重要な「お客様に良い製品、良いサービスを提供する」ことにつながっていき、世界中のお客様からご指名いただける日立建機ブランドの強化につながっていくと確信しています。

取材・文/佐藤 聡
撮影/倉部 和彦

(2014年4月取材)

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Vol.110(2014年6月号)

第2ステップに入った日立建機2020VISION

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