地球の上の“Kenkijin”Vol.126(2018年12月号)

日立建機 研究・開発本部 実験解析評価センタ 技師 加藤啓子

地球の上の“Kenkijin” - 日立建機 研究開発本部 実験解析評価センタ 技師 加藤 啓子

図面にしかない機械の耐久性を事前評価 技術力だけでなく、人の活かし方も身に付けたい

*Kenkijin(=ケンキジン)とは、日立建機グループのありたい姿を理解し、その実現のために自ら考えて行動する人です。

日立建機 研究・開発本部
実験解析評価センタ 技師

加藤啓子

2009年入社

神奈川県出身。趣味は4歳から始めたピアノ。子どもの頃から、演奏だけでなく音が鳴るピアノのメカニズムのほうにも興味があったとか。しかし、その腕前は確かで2018年に行われたPIARAピアノコンクールではファイナルに進出し、アマチュア部門で全国第2位に輝いた。また大学時代に専攻した振動解析への興味は、音楽を学ぶなかで関心を持った音律がきっかけだという。

通学路の横に広がるトウモロコシ畑。そこに働くミニショベル。私の原風景です。大きな機械が大好きな私の横には、ランドセルを背負ったクラスメイト。

「あのショベルいいなぁ」
「シャベルじゃないの?」
「違うよ、ショベルだよ!」

そんな会話も懐かしい想い出です。そしていま、私は日立建機の実験解析評価センタで“ホイール式油圧ショベル”の事前評価に携わっています。

新製品を世に出すには、安全性や効率性はもちろん、操作性や居住性、放熱性など、事前にさまざまな試験を行わなければなりません。とはいえ、試作機を何度も作ってテストし、また改良して作っては試す――の繰り返しでは、開発にかかる期間やコストが莫大なものになってしまいます。そこで、これまで私たちが蓄積してきた知見やデータ、さらにはコンピュータによる解析技術を活用して演算処理し、試作前に強度などを予め確認する「事前評価」が重要になるのです。

事前評価は開発の流れの1工程ですから、自分の役割だけを果たせばいいというものではありません。例えば、解析の結果、機械の強度が足りないとき、その指摘だけをすればいいのではなく、どう改良すべきかを考え、設計担当者に提言します。一方で、ただ頑丈なだけでも困ります。生産ラインに載せたときのことを見据え、製品の組み立てやすさやメンテナンスのしやすさも設計担当者と一緒に考えます。

“コンピュータによる解析評価”というと、デスクでディスプレイとにらめっこしているような業務をイメージされがちですが、多くの部署の方との連携やコミュニケーションも欠かせない仕事です。

大学の工学部で振動工学を専攻していた私は、将来は建設機械メーカーで働くと、早くから決めていました。日立建機を選んだ理由の1つは、充実した研究開発施設が整備されていたからです。私は就職活動中、いくつかの会社を見学しましたが、研究開発の現場まで見せてくれたのは日立建機だけでした。特にそこで目にした、「6自由度振動ベンチ」はなかなか見ることのできない試験装置で、「入社できたら、コレが使えるんだ!」と、私はすっかり魅せられてしまったのです。

入社を決めたもう1つの理由は、いきいきとした社員の姿。工場見学の後、何人かの社員の方々と話をしたのですが、話題に出てくるのは建設機械のことばかり。“建機愛”というのでしょうか。目を輝かせ、ひたすら建設機械を語る。「私もあんなふうに自社製品への愛情を持ち、誇りを持って仕事に取り組みたい」そう強く感じました。

当初、希望していた部署は設計部門でした。そのため、「実験解析評価センタ」に配属が決まった時は、少し戸惑いました。その時、人事部長に「たぶん、あなたがやりたいことに一番近い部署なのではないかな」と言われましたが、いま振り返ると、まさにその通りです。当時、“設計”への憧れは漠然としたもので、実は私は、実験や現象の解明をするのが大好きなのです。

配属に関わった諸先輩方は、私との面接を繰り返すうち、私の本当の希望、興味、適性を見定めてくれたように思います。また、入社5年目から約2年間、設計部門に異動したことで、設計者の考えや苦労を理解でき、いまの事前評価の仕事にも活かされています。他にもさまざまな仕事を担当し、その全ての経験がいまの仕事に結びついていることを、最近特に感じています。

経験といえば、忘れられない苦い経験もあります。入社4年目の頃。試験の最中に、ある機種のエンジンブラケットを締結するボルトが破損し、その原因解明を担当しました。なぜボルトが折れるのか……。6自由度振動ベンチでデータをとり、その波形を見つめました。でも、どう解析してもわからないのです。取り組み始めた3日目の夜、もうお手上げ状態の私のもとに上長がやってきて一言、「わかった。部分遊離だよ」と。

ボルトというのは、2つの部品をぴったりと締め付けることで軸力が働き、壊れにくい構造になります。ところが何らかの事情でボルトが浮いてしまうと、ボルトはただ差し込まれているだけの状態となり、とても脆くなる。なぜ浮いてしまったのか、原因を突き止めてきたというのです。

「どうして分かったんですか」と尋ねると、上長は「現場を見てきた」と――。雷に打たれたような衝撃が走りました。データの波形さえ見れば、だいたい分かる。私はそうタカをくくっていたんです。全然、違いました。「なんて私は傲慢だったのだろう……」と、反省するとともに、なぜ日立建機が「現場、現物、現実」の3現主義を掲げているのかが、身にしみてわかりました。

いまの目標は2つあります。大学時代の座学が、実務においては結果を裏付ける要素となることが分かったので、さらに知識を得ることで事象への理解を深め、技術力を向上させていきたいです。

2つめは、人を活かせる人間になること。私自身、諸先輩方に導かれてここまで来ました。「いずれはあなたも部下を持つ」と、上司から言われています。気をつけたいのは自分のやり方に固執しないこと。誰しも自分のやり方が一番いいと思っています。苦労を重ね、時には泣きながら身につけた技術ですから、捨てがたい。でも、押しつけては摩擦が起きるし、人も育たない。物事に対するこだわりが強い自分だからこそ、強く自戒するところです。

そして、女性のエンジニアをもっと増やしたいと思っています。メカニズムへの興味に、「女性の視点」や「女性らしい考え方」などはさほど関係がないので、職業のひとつとして来てくれたら嬉しい。物事の仕組みは面白いし、先輩方は懸命です。現場は情報が詰まっていてすぐに行ける。エンジニアは楽しいですよ!

【6自由度振動ベンチ】実機振動をほぼ再現した6自由度振動試験機。部位毎の振動試験を行い、振動強度の信頼性を事前評価する。現場の振動を忠実に再現するために、X・Y・Zの3方向の並進と、X・Y・Zそれぞれの軸での回転を自由に作り出せる。