Solution Linkage 通信簿 Vol.126(2018年12月号)

Solution Linkage 通信簿 ICT施工ソリューション編 複雑構造のスマートインターチェンジ工事 初導入の本格的ICT施工を“協創 【山口県・防府市】 山陽建設工業株式会社

写真提供/山陽建設工業 取材・文/増田祐二 撮影/鈴木伸之(クロスボート)

ノウハウを蓄積し、ICT施工の実績を増やしていきたい

中国自動車道・湯田パーキングエリア(山口県・山口市)で、一般道からETCゲートを経由して高速道路の上下線に接続する「スマートインターチェンジ」の工事を請負っているのが山陽建設工業株式会社だ。

本工事の入札条件には、ICT施工を活用する企業の評価が高くなる項目が含まれていた。山陽建設工業ではノウハウを蓄積したいという想いから日立建機日本のサポートを受けて全面的なICT施工導入を決定した(工期:2018年12月〜2021年2月)。

「現在、当社では公共工事を主とした土木・建築工事が事業の柱となっていますが、今後はICT施工の実績を増やし、請け負う工事の幅を広げていきたいと考えています。昨秋、他の現場でICT油圧ショベルの2Dマシンガイダンス機能を使用し、作業の効率化を実感しました。今回は日立建機日本に相談し、当社にとって初の、起工測量からの全プロセスにわたるICT施工への挑戦となりました」(取締役副社長・塩田唯氏)

日立建機日本では、広島の建設コンサルティング会社と支援チームを組み、現場のICT施工を全面サポートする体制を整えた。起工測量の段階では、日立建機日本がコンサルティング会社を通して選定した測量会社がドローンを飛ばした。しかしドローンを使用するにあたり高速道路本線上の飛行リスクを避ける必要があり、伐採際など空撮では影になる地点もあったことから、レーザースキャナも併用された。起工測量の際は市や発注主から約30名の視察者が訪れた。測量後、点群データは測量会社により作成、三次元設計データはコンサルティング会社と日立建機日本で共同作成している。

取締役副社長 塩田 唯氏

取締役副社長

塩田 唯氏

「これまで幾度か現場へ視察に行き、ICT施工をぜひ導入したいと考えていました。湯田PAのこの現場は若手社員たちも興味を持ってくれています。技術が伝わればもっともっと発想も広がるでしょう」

現場が“見える化”できる三次元設計データ。日立建機日本のサポート体勢を高く評価

一般道と高速道路本線脇の既設パーキングエリア(PA)とを繋ぐ本工事では、上下線それぞれのPAへ進入路・退出路を接続するが、ほとんどが曲線道路である。

「こうした複雑な構造も、測量後の三次元点群データと三次元設計データを組み合わせることで施工内容が“見える化”され、理解も早まります。また平面図上では気づかなかったズレや現況との取り合いなども、三次元化することで見えてきました。

今回、初めて本格的に日立建機日本チームと組んでICT施工を導入したことが、最終的には起工測量から出来形管理までのノウハウの習得につながると考えています。日立建機日本は、当社の要望に親身に耳を傾け、必要なポイントについては的確かつ分かりやすく指導していただき、ゼロからサポートをしてくれている点が高く評価できます」(現場代理人・赤地悟氏)

「中国自動車道 湯田PAスマートインターチェンジ工事」の現場の設計データ

「中国自動車道 湯田PAスマートインターチェンジ工事」の現場の設計データ。起工測量後の点群データに、三次元設計データを重ねたもの。仕上がりの様子や複雑な構造であることが“見える化”された。

本工事の完成予想図(提供/NEXCO西日本)

本工事の完成予想図(提供/NEXCO西日本)。写真内右上の曲線道路が、上の空撮および三次元設計データの手前部分にあたる。

工期中に動かす土は、切盛土工約7万m³。現場にはICT油圧ショベルZX200X-6、ZX75(マシンガイダンス)、ブルドーザが日立建機日本からレンタルされ、機械に組み込まれた三次元設計データをもとに、法面整形や整地作業を行なっている。当初は切土だけをICT施工する予定だったが、盛土にも導入した。

「盛土部分はカーブの曲がりが強いため、従来の施工方法では、法面整形に5m〜10m間隔の丁張が必要です。しかし、三次元設計データを組み込んだICT油圧ショベルのマシンコントロール機能により丁張は少なくて済み、手元作業員も不要となりました。人工数の低減や工期短縮の効果は大きいと感じています。1層30pごとで仕上げるブルドーザの整地作業においても、日々の水勾配をつけるためのブレードコントロールのデータを日立建機日本が迅速に補正してくれました」(赤地氏)

日立建機日本からレンタル提供しているICT油圧ショベルZX200X-6とブルドーザ

日立建機日本からレンタル提供しているICT油圧ショベルZX200X-6とブルドーザ。上:盛土工事の法面整形。カーブのきつい曲線道路のため従来施工だと必要な丁張が少なくて済み、作業効率や安全性も向上する。下左:1層30cmごとに盛土された面を整地していくICT施工対応のブルドーザ。積層ごとのオフセット値や水勾配のデータ補正を加えながら作業していく。下右:切土施工の現場でもICT油圧ショベルに組み込んだ三次元設計データにより、高い精度で施工を実現。

同社はもとより測量に高い技術をもつ。この現場の出来形管理も三次元設計データを入力したトータルステーションで行う計画だ。

「その作業に適切な測量機器の選定についてもコンサルティング会社からアドバイスを受け、使い方のレクチャーもしていただきました。担当者の知識も深く、遠方ながら頻繁に現場へ顔を出してくれるなど、“一緒にやってくれている”チームという印象です」(赤地氏)

ICT施工のチームパートナーに日立建機日本を選んだ理由とは

「最終的にフルオートメーションでの施工をめざす社会の流れの中で、たとえばICT施工のサポートをすべて“お任せ”した場合、現場の担当者がICT施工の優位性について何も知らないまま終わってしまうのでは―という心配がありました。本来、現場で操作・管理する“人”の存在には大きな意義があるはずです」(塩田副社長)

将来的にフルオートメーションの時代が到来すると、“人”の技術や知恵を結集してひとつのものを造り上げる土木建設業としての醍醐味が薄れてしまうのではと塩田副社長は懸念する。

「現場の担当者が1つ1つ質問して、それに1つ1つ答えてくれる日立建機日本と組んで良かったと思っています。そこで得られた知識とノウハウで、まず社内のスペシャリストを養成し、そこから若手へ技術を繋げていきたいと考えています」

ICT施工による効果について塩田副社長は、生産効率や利益率の向上より、導入によって生み出される「時間」こそが最大の利点だという。

「ICT施工によりめざすものは、最終的に“人が必要なくなること”ではなく、企業の強みである“人の技術を強化し、伝承すること”です。ICT施工により空いた時間を、ベテランから若手へ技術を伝承・強化する時間に活用していきたいと考えています。

技術者不足の問題や働き方改革など、近年の建設業は大きな変革の時期に入ってきています。ICTは今後の建設業界の中核となる技術となっていくでしょう。

今後もこの変化を前向きに捉え、社員と共にやりがいのある建設会社をめざしてゆきたいと思っています」

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【Solution Linkageへの評価】

【Solution Linkageへの評価】

現場代理人

赤地 悟氏

「ICT施工に関する知識や情報提供だけでなく、何かあるとすぐに現場に駆けつけてくれる機動力も日立建機日本の良さです。しかも担当者が施工管理の経験者なので、相談しやすいと感じています」