建設機械に求められる性能はパワーや燃費、機能、操作性など様々ですが、耐久性は最も重要とされます。工事現場での建設機械の稼働性は工事の進捗に直結するからです。特に私の所属する部署が開発と研究を担っている走行減速機に故障が生じると、建設機械は自走ができなくなり、無用の鉄の塊になってしまいます。ですから私が入社してから担当した走行減速機を構成する部品の長寿命化研究は、非常に重要なミッションでした。
油圧モータのパワーを駆動用のトルクに置き換えるコンポーネント部品である減速機は、複数の歯車や軸、ベアリング、ケース等で構成されますが、それらの形状や材料、表面処理等を少し変えるだけでも耐久性が大きく左右します。そこで、各パーツの最適化を求めて数々の実験を繰り返し、全体として耐久性能を引き上げていくのが私の役目でした。研究には材料や力学面の理論のリサーチに加え、試験装置の調整、治具の開発、材料メーカーや加工・熱処理等を外注するサプライヤへの依頼と検証、生産技術部門との加工条件の検討、品質保証部との試験条件の検討まで含まれます。研究に専念した3年間で、構成部品の長寿命化につながる知見をいくつか獲得することができました。