サステナビリティ トップメッセージ

 

Q 2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により、ビジネスの在り方や生活様式など社会構造そのものが大きく変化した年でした。1年を振り返っての率直な感想をお聞かせください。

お客さまの課題である「安全性の向上」「生産性の向上」「ライフサイクルコスト低減」が、一層強く求められるようになったと感じています。

2020年度は私自身を含めた日立建機グループの経営陣や社員、そしてお客さまの価値観に変化が生じた1年でした。正直に言うと、これまではどこか遠い未来の話だと思っていた非常事態が、より身近な問題として私たちの身に降りかかってきた、これはやはり大きな変化であったと思います。感染の疑いによって建設現場が一時休止して2週間仕事ができない、しかし工期は守らなくてはならない、だから効率化を図るしかない、といったような目に見えて生産性を向上させる必要が出てきました。もちろん、それは現場で働く人たちの安全性を確保した上で実現しなければならないことです。また、お客さまの資金繰りや業績が悪化し、もっと燃料費を削減できないか、といったコスト削減に対するご要望もこれまで以上に高まりました。私どもがミッションとして掲げているお客さま課題の解決、すなわち「安全性の向上」「生産性の向上」「ライフサイクルコスト低減」ということが、コロナ禍によって一層強く求められるようになったと感じています。

 

Q 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、製造業を中心にサプライチェーンに甚大な影響をもたらしました。日立建機はこれまでもBCP(事業継続計画)やリスクに対する準備を進めて来られたと思いますが、サプライチェーンに対する影響はありましたか?

生産活動、製品供給におけるサプライチェーンについて認識を新たにし、強化を進めています。

幸い当社では、コロナ禍によって直接的にサプライチェーンが寸断されたという被害は出ていません。しかしながら、サプライチェーンのリスクについて、改めて考えるきっかけとなったことは確かです。私はBCPを2つの観点で考えています。1つは、「生産活動としてのサプライチェーン」の維持です。これは、当社の生産活動を途絶えさせず、取引先とのさらなる連携強化のもと、日立建機グループとしてしっかりとした生産を行うことで従業員の雇用を守り、ステークホルダーの期待に応えることです。もう1つは、「製品供給のサプライチェーン」の維持、つまりお客さまが必要とする時に必ず当社の製品・サービス・レンタルを供給できる体制を維持することです。特に、建設機械というのは自然災害発生など緊急時の復旧・復興作業に必要とされますから、非常時であっても供給体制を維持することが不可欠です。こうした認識のもと、社会活動を止めないためのサプライチェーンの強化をこれまで以上にしっかりと行っていきます。

 

Q グローバルな気候変動がビジネスにさまざまな影響を及ぼす時代になっています。日立建機グループにとっての脅威・リスク、または事業機会をどのように捉えておられるでしょうか?

グローバルな気候変動・脱炭素の機運こそビジネスチャンスだと捉えています。

コロナ禍と並んで人類が直面するグローバルな課題が気候変動リスクですが、当社はむしろ前向きに取り組みたいと考えています。特に脱炭素へのニーズの高まりは、当社にとって重要な事業機会でもあると認識しています。排出ガス規制もますます厳しくなってきていますが、そのレベルは国や地域ごとに異なります。それぞれの環境規制の動向やお客さまの現場の課題を把握して、それに合う形で提案をしていくことが求められています。
例えば、当社では建機の電動化ラインアップは既に持っていますし、鉱山向けのダンプトラックについても架線から電気を得ながら走るトロリー受電式ダンプトラックの実績があります。また、鉱山設備の管理システムなどのマイニングプロセス全体に強みを持つABB Ltd.と協業することで先般合意しました。今後、両社で鉱山全体のネット・ゼロ・エミッションをめざして取り組んでいきます。つまり、当社のビジネスは環境に配慮した建設・マイニング機械を売るだけでなく、インフラ設備まで含めた管理という新しい領域に踏み込もうとしていると言えます。
また、オペレータの操作次第で燃費や効率性も大きく変わりますので、お客さまの使い方のデータを見てソリューションを提案することにも注力しています。日立建機グループでは、IoTとAIを活用し、鉱山現場の課題を解決するソリューション「ConSite® Mine(コンサイト・マイン)」と「運行管理システム」により、製品の稼働効率向上を図り、製品使用中のCO2排出量の削減も推進しています。つまり、建設・マイニング機械本体のCO2削減や効率化だけではなく、効率的な使い方までを提案していくことで、私たちがめざす「機械によるCO2削減」の目標をトータルに達成できますし、お客さま自身の目標達成にも貢献することができます。
世界では今、脱炭素化の流れを受けて「脱石炭」の動きが加速していますので、我々の責務としては、石炭の採掘現場で稼働する機械のCO2排出量を可能な限り削減して、脱炭素と社会的責任を同時に果たすことだと考えています。一方で、ハードロックと呼ばれる鉄鉱石、銅、ニッケルなどの産出地域に注力していくことが重要と考えています。今後、産出国である中央アジア、CISといった地域でマイニング製品の拡販を進め、ハードロック関連の売上を伸ばしていくことで、石炭関連の事業比率を抑えていく方針です。
こうした世界各地の動向を踏まえ、日立建機グループはお客さまのパートナーとして、お客さまが積極的にCO2を削減していけるよう最適な製品やソリューションを提案していく、そうした使命を果たしていきます。

 

Q 資源を持続可能な形で循環させて経済成長をめざすサーキュラー・エコノミーの概念が注目されています。循環型社会の構築といったテーマについては、どういったコンセプトを掲げられているでしょうか?

建機のライフサイクルに着目し、効率を高める最適なソリューションを提供することで、サーキュラー・エコノミーの実現をめざします。

循環型社会の構築というテーマでは、当社のレンタル事業や部品再生事業が大きな役割を果たします。限りある資源を効率的に使っていただくという観点で、お客さまが必要な機械をすべて所有するよりも、工事量に応じて一部をレンタルにした方が機械の効率化につながる場合もあります。また、新しい部品を使って修理をするのではなく、お客さまから回収した部品を再生して次のお客さまに使っていただく。これも資源循環型のモデルにもなり、お客さま自身の部品コスト削減にもつながります。
機械のライフサイクル全体を通じて、最適なソリューションを提供する事業のことを、私たちは「バリューチェーン事業」と呼んでいますが、建設・マイニング機械の「効率の良いライフサイクル」、これを実現できる体制が、既に日立建機グループには整っていると自負しています。このバリューチェーン事業をさらに深化させて、環境と経済とが循環するサーキュラー・エコノミーを実現していきたいと考えています。

 

Q 近年、外国人労働者の待遇、広告における性差別などサプライチェーンも含めた人権課題がクローズアップされるケースが増え、企業の倫理観や対応が厳しく問われるようになっています。こうした人権リスクに対するお考えをお聞かせください。

人権デュー・ディリジェンスの推進体制を早期に確立し、人権リスクの把握とその対策に努めます。

グローバルに活動する当社グループにとって、人権リスクに適切に対応することはお客さまや社会から信頼される企業であり続けるために不可欠なものと認識しています。
これまで日立建機グループとしては、日立製作所が主催する「人権デュー・ディリジェンス ワーキンググループ」に参加する形でビジネスにおける人権リスクについて検討してきましたが、2020年度からは日立建機グループとして人権デュー・ディリジェンスを推進していく体制としました。その第一歩として2021年5月、関係役員が出席する「人権デュー・ディリジェンス推進会議」を開催しました。本会議では、強制労働・移民労働対応状況の調査とサプライヤーへの展開などについて議論されました。今後、私自身が推進責任者となり、年に2回実施していく予定です。人権リスクは社会の変化に伴って変わる可能性があるため、継続的に優先すべきリスクの特定や対策に努めてまいります。

 

Q 世の中は急速に変化しており、建設機械業界もこれから変革の時期を迎えることと思います。日立建機グループとしてどのような戦略を持って対応されるお考えでしょうか?

建機の稼働状況を見守りながらサポートする「Solution Linkage®(ソリューションリンケージ)」を深化させ、お客さまのビジネスをサポートします。

第5世代移動通信システム「5G」の登場など急速に変化する世の中で、建機・マイニング機械のビジネスも新しい時代に突入しています。建設・マイニング機械は、1台でもトラブルで停止してしまうと、お客さまの作業日程だけでなく関連する工事全体に影響を与えてしまいます。日立建機グループのビジネスは、機械を売るだけでなく、機械が稼働を続けられるよう常に見守ることにも注力すべきだと考えています。そこには、IoTやICTが欠かせません。
日立建機グループでは、IoTやICTを活用して建機を見守るソリューションを総称して「Solution Linkage®」と呼んでおり、そこから派生するさまざまなメニュー・サービスを展開しています。例えば現在、主要部位の故障予兆検知率は75%に達しています。これによって、従来はサービススタッフの経験と勘に頼っていた故障予兆検知を、定量データとしてお客さまにお知らせできるようになりました。このような形でお客さまの仕事の効率化や資産管理にソリューションを提供することこそが重要と考えています。

 

Q モノよりもコトを重視し、サービスやソリューションを提供すること自体は競合他社でも行われていますが、その中で日立建機の優位性はどのような点にあるでしょうか?

お客さまの課題を肌で感じ取り、最適なソリューションを創造することが最大の強みだと考えています。

当社のビジネスモデルの特長は、当社の従業員によるお客さまへの直接販売・サービスを中心としているところです。特に、日本、アジア、オセアニア、アフリカなどは、この直接販売・サービスを基本としています。これは、やはり得られるものが大きく、ダイレクトにお客さまと接することによって、お客さまの課題に直接的にタッチできることが私どもの強みだと思っています。一方、ある意味で厳しい面もあります。直接対面しますから、お叱りを受ける時も直接です。しかし、そうした経験が人財を育て、他にはないビジネスモデルのベースになっているのだと思います。色々な新しいソリューションのアイデアはそういった直接的なお客さまとの対話から創造されることが多いのです。

 

Q 従業員の皆さんに日頃から伝えておられること、期待することなど、成長を支える人財についてのお考えをお聞かせください。

日立建機グループの共通アイデンティティである「Kenkijinスピリット」、そして「3つのC」を持ち続け、仕事と向き合ってほしいと願っています。

日立建機グループの人財育成の基本になっているのが「Kenkijinスピリット」と呼んでいる行動規範で、これを貫く思想として、Challenge(チャレンジ精神)、Customer(個客志向)、Communication(風通しの良さ)から成る「3C」があります。この3Cという言葉は2006年につくったものですが、なぜこの3つに絞り込んだかというと、それまで我々のビジネスは日本国内が中心でした。しかし、2005年あたりから海外でのビジネスが増え、それに伴い、日本以外の国籍の従業員が増えていって意思疎通が難しくなったという背景がありました。そこで、どの国の人でも理解できる共通の思想を持とうと呼びかけ、突き詰めて残ったのがこの3Cです。人財育成の視点でも、これを大事にしていきたいと考えています。

 

Q グローバル共通の思想がある一方で、人財の多様性についても対応が求められています。ダイバーシティというテーマについては、どのような取り組みを行っていますか?

性別・年齢も含めた広い範囲で、誰もが活躍できる職場環境の実現に取り組んでいます。

女性活躍という視点では、現在、課長以上の女性管理職の割合が国内外グループ全体で約9%になっていますが、今後さらに女性社員の活躍の場を増やしていけるよう、キャリア形成や継続就労・復職などの取り組みを進めていく予定です。また、生産現場で作業する社員においても少しずつですが、女性が増えてきている傾向にあります。先日、自社の工場を訪問して、若い女性社員が軽くて扱いやすい電動工具を使っている場面を見学しました。そこで気が付いたのは、このような取り組みの結果、女性だけでなくシニアでも現場で活躍できるということです。これまでは40歳頃になって体力が低下してくると負荷のかからない仕事に異動するというケースもありましたが、作業者への負担が軽減されれば、希望により直接員として活躍を続けることもできるわけです。つまり、女性活躍という視点はもちろん、年齢まで含めた多様性の中で、一つひとつ仕事のやり方を見直していくことが、広い範囲で多様性を実現することにつながると考えています。

 

Q 最後に、ステークホルダーの皆さまに向けてメッセージをお願いします。

お客さまに最適な機械を供給し続け、持続可能な社会の実現に貢献します。

私たちのお客さまというのは、国や地域の発展と維持、生産活動や社会活動の維持のために機械を使って仕事をされている方々です。私たちの最終的な活動の目的は、機械をつくることではなく、機械を売ることでもなく、お客さまが国や地域の発展や生産活動の維持、社会活動の維持をするために最適な機械・ソリューションを供給し続けることです。その結果として、道が、水道が、街ができ、国が栄え、人々の生活が豊かになる——これが日立建機グループの究極的な企業ビジョンです。
日立建機グループの事業は“エッセンシャル”であると私は捉えています。持続可能な社会づくりのために、機械を開発、生産し、納入後もサービスやレンタルなどのバリューチェーンを提供し続けることを常に意識して取り組んでまいります。日立建機グループは、これからもエッセンシャルビジネスとして、持続可能な社会の実現に貢献していく所存です。

インタビューを終えて

厳しい環境変化の中で、モノをつくること、モノを売ることが目的ではなく、最適な機械・ソリューションを供給し続けることが究極のゴールなんだという視点は斬新であり、説得力のあるものと感じました。そして、そのことを従業員の皆さんに伝える、考えてもらう努力をされていることは非常に素晴らしいと思います。日立建機のビジネスは昔からエッセンシャルなビジネスであったし、これからもエッセンシャルであり続けると思います。持続可能な社会づくりのために、お客さまの身近で頼りになるパートナーであり続けることを期待します。

冨田 秀実 氏

インタビュアー:冨田 秀実 氏

ロイドレジスタージャパン株式会社代表取締役。事業会社におけるCSRマネジメントの長期の実務経験を持ち、政府や業界団体の委員会、国際規格の策定プロセスにも参画。日本企業のESG、サステナビリティ戦略に対して国際的な視点から支援を展開している。



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