- GHG排出削減
- 資源循環
- 生物多様性
GHG排出削減について
日立建機グループは、「気候変動に挑む製品・技術開発」をマテリアリティの一つとしています。2050年までにバリューチェーン全体を通じてのカーボンニュートラルをめざすべく、製品開発および生産工程の両面でGHG削減に取り組んでいます。
そして、2030年度までのGHG排出量削減目標を下記のように設定しています。
製品におけるGHG排出量削減率33%(2010年度比)
生産におけるGHG排出量削減率45%(2010年度比)
環境配慮型製品の2030年度までの開発ロードマップ
電動化へ向けての取り組み
マイニングダンプトラックの電動化
⼤⼿鉱⼭各社のお客さまは、 2050年までのネット・ゼロ・エミッションの実現を⽬標に掲げており、なかでも台数の多いダンプトラックのゼロエミッション化の要望が⾼く、その要望に応えるため、当社はスイスABB 社と連携してフル電動化に取り組み、鉱山現場全体のネット・ゼロ・エミッションをめざしています。当社が既に持っている電動走行可能なトロリー式ダンプトラックのエンジンをバッテリーに置き換えることで、トロリー給電とバッテリー給電を併用してフル電動化を実現します。当社のリジッドダンプトラック「EH3500AC-3」をフル電動駆動にした場合、1⽇ 20時間稼働で 6.8トンのCO2排出量の削減につながります。
生産工程でのGHG排出削減
省エネルギー、再生可能エネルギーへの転換(設備投資による自家発電、再生可能エネルギー電力導入)、電化、燃料転換などの面で CO2排出量の削減を推進しています。
省エネルギー設備投資をさらに後押しし、2030年度までに生産でのCO2排出量(Scope1&2)を2010年度比で45%削減するために、2019年度から、投資判断で炭素価格を考慮するインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入しています。開始当初5,000円で設定していたICPは、CO2排出量の少ない設備の重要性の高まりや将来の炭素価格の導入に備えて、2021年には1tあたり14,000円まで引き上げました。エネルギー見える化システムや太陽光発電システムを導入することで、省エネルギーおよび脱炭素へ投資し、2021年度は27.1%削減することができました。
また、日立建機グループでは環境パフォーマンスの継続的改善を行うため、当社独自の環境負荷見える化集計システムを構築し、月単位で管理を行っています。 茨城県内5工場では、日立製作所の先進的なIoT技術を活用した統合エネルギー・設備マネジメントサービスを導入し、電力消費量や待機電力量などの見える化したデータに基づき、生産設備の省エネルギー、事務所内の節電施策などに取り組み、電力のピークカットや待機電力削減などを実施してきました。こうした取り組みが評価され一般財団法人省エネルギーセンター主催の平成30年度「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。
2021年4月からは、日立建機エネルギー管理システムを導入し、引き続き生産工場でのエネルギーの削減に取り組んでいます。
今後の取り組み
電動化建機は、現状で電動コンポーネントがまだまだ高価であり、お客さまの望む価格に近づくには高いハードルがある一方で、市場の急速な立ち上がりに備えたラインアップの 拡充も求められています。今後、自動車やトラックの電動化に伴ってコスト競争力の高い電動コンポーネントの技術が実現すれば、ミニから超大型までの油圧ショベルやホイール ローダなど幅広いレンジで電動化製品の提供が可能になり、当社グループの強みも存分に発揮できると考えられます。 製造工場では太陽光発電の導入、電力の見える化システムやコージェネレーションシステムなど省エネにつながる設備の導入、などの施策で、製造プロセスにおける効率化を図り、CO2削減を進めていきます。
イニシアティブへの参加
日立建機は、(社)日本建設機械工業会(以下、「建機工」)の正会員として建機工が提唱する 建設機械業界の「低炭素社会実行計画」を達成するため、技術製造委員会の省エネ技術部会および製造省エネ対策部会に参加して、気候変動に関する施策提案・意見交換を行っています。また建機工の「低炭素社会実行計画」の方針に従い、気候変動対策に取り組んでいます。
資源循環について
日立建機グループは、サーキュラーエコノミーに貢献するバリューチェーン事業を通じて資源循環型ビジネスへの転換をめざしています。
「資源循環型ビジネスへの転換」は、日立建機グループのマテリアリティとなっています。資源を採掘し、利用しては廃棄する、持続可能性のないビジネスモデルはいずれ限界を迎えます。日立建機グループでは、再生、中古車、レンタル、サービス等の事業で構成される「バリューチェーン事業」を通じて、資源循環に貢献しています。 また、事業活動に伴う廃棄物の削減を推進しています。生産拠点を中心に4R(リデュース、リユース、リサイクル、リニューアブル)活動を積極的に進め、資源を有効に使う取り組みを通じて、自然から採取する原材料資源利用の回避または最小化、リサイクル素材の積極的な利用、製品や部品のリユース、リサイクル活動により、廃棄物(有害廃棄物を含む)の削減を図っています。
水資源については、事業活動に伴う水使用量 (淡水も含む)の削減、水の循環利用により、有効活用を図っています。水使用量は、ロボット化や塗装条件などの最適化を図ることで削減を進めています。水の循環利用については、塗装設備の使用水の長寿命化や循環水の利用拡大などにより節水を推進しています。
資源循環を実現する日立建機の製品とサービス
部品再生事業
建設機械は、さまざまな環境下で長時間稼働するため、部品交換や修理に掛かる時間はお客さまの現場の生産性を大きく左右します。 日立建機は、1998年より油圧ポンプや油圧シリンダ、走行装置などの部品を再生する事業をグローバルで展開しています。
お客さまから回収した部品を 分解、整備、検査を行い、必要に応じて消耗品を交換するなどして、新品と同等の機能と性能を保証する再生部品を造っています。高度な再生技術によって、部品の寿命を長くすることで、資源の投入量を抑制することができます。また、これまで蓄積したノウハウを活かし、廃棄対象の機体を新車同等にまで再生、これを中古車として販売することで新 品材の使用削減を図り、新たな資源循環型ビジネスモデルに貢献していきます。日立建機ザンビアでは、超大型油圧ショベル(EX1200)を新車同様に再生するだけでなく、製品のマイナーチェンジまでを反映させた、価値の高い製品として再生させる取り組みも行っています。
再生品生産量:生産した再生品の部品ユニット数
レンタル・中古車事業
日立建機が認定するレンタル機「PREMIUM RENTAL」 の使用期間中に、「ConSite」を通じて高度なメンテナンスを行うことで、機械が稼働する寿命を延ばし、その機械をメーカー保証付きの良質な中古車「PREMIUM USED」として新興国へ流通させることで、廃棄される機械数の低減に寄与しています。
部品・サービス事業
「ConSite」のメニューを通じて、IoT を活用した適切なメンテナンスにより機械の長寿命化に取り組んでいます。同時に機械稼働を一台ごとにモニタリングし、作業改善提案を通じて燃料消費量低減への 提案を行い、CO2削減にも貢献しています。
製品のレトロフィット対応
日立建機では、納入した機械に、システムや機器を追加することで、機械の性能を向上させることができる製品開発に努め、お客さまのライフサイクルコスト低減と省資源に貢献しています。
例えば、リジッドダンプトラックEH AC-3シリーズは、現在開発中の鉱山用ダンプトラック自律走行システム(AHS)に必要なシステムを追加搭載することで、鉱山運営の自動化に欠かせない「AHS仕様機」としてレトロフィットすることが可能です。 また、ICT施工ソリューションの中核を担う、ICT油圧ショベル ZX200X-6は、2D(2次元)仕様機をご使用の場合でも、3D(3次元)機能専用機器を追加装備することで、人工衛星からの測位データを活用する3D仕様へのアップグレードが容易にできます。
水リスクへの対応
水は大切な資源であり、地域によって使える水量や水質が異なります。日立建機グループでは事業活動の中で水ストレスレベルの高い地域を特定するために、世界資源研究所(WRI)が発表したAQUEDUCT(アキダクト)と世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filterツール、およびローカルデータを用いて、国内外の主要生産拠点の水ストレスレベルを定量化、水ストレスの高い地域を特定しました。 21拠点中、インドネシアと中国にある2拠点が、水ストレスの高い地域となっています。
水資源有効活用への取り組み
今後の取り組み
資源循環については、グローバルでの再生事業の拡充・発展のため、土浦工場(茨城県土浦市)および常陸那珂工場(茨城県ひたちなか市)に分散していた再生工場を、2024年度から播州工場(兵庫県加古郡)に集約・統合し、部品再生および車体再製造事業の拡大と効率化を図ることとしました。この再生事業の集約により、現在2つの工場にある再生工場の施設・スペースを利活用し、新車・コンポーネントのさらなる生産能力増強を実現します。
水資源については、水の使用量削減と循環利用をさらに推進するため、埋設配管の地上化による漏水対策、処理水の再利用による循環再利用率向上などを行っていきます。
生物多様性について
日立建機グループは、「自然共生社会」をめざし、生態系の保全活動を環境保全行動指針に定めています。
企業は、紙や水などの供給や、大気、水、土壌の質や量の調整といった生態系から受ける恵み、生態系サービスに依存しています。この生態系サービスを 維持・回復するために、日立建機グループでは「事業」と「自然保護に関する社会貢献活動」の両面から、生態系の保全に貢献できると考えています。具体的に は、事業を通じた貢献として、製品のライフサイクル(原材料の調達、生産、輸送、使用、回収・リサイクル、適正処理)における生態系への負荷を低減する設 計・生産活動を推進するとともに、水や空気の浄化など、直接的に生態系を保全する製品・サービスを提供しています。化学物質の管理についても、生態系保全 の一環と位置づけ、継続的に適正管理に努めています。また、自然保護に関する社会貢献活動では、従業員のボランティア活動による植林や希少生物の生態調査 など、生態系の保全につながる活動を推進しています。
生態系と企業のかかわり
生物多様性保護を実現するため取り組み
2022年12月に開催された「生物多様性条約締約国会議(COP15)第二部」で、生物多様性に関する世界目標が採択されました。2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が定められ、企業にはビジネスによる影響評価と情報公開の促進が求められています。
日立建機グループは2011年より「日立グループ生態系保全の手引き」に基づき、企業活動と生態系のかかわりに関する考え方や取り組み事例を社内で紹介してきました。従業員の認識をさらに深めるため、2012年より日立グループの「事業を対象とした生態系の保全アセスメント」を導入し、取り組みを評価しています。2015年度には連結対象の主要生産拠点を対象に本アセスメントの評価をすべて完了させ、ライフサイクル全体での生態系との関わりを認識、現状把握、課題を特定しました。また実施中の活動約400件のうち、63件の活動のレベルアップを確認しています。
生態系の保全活動の代表的な事例として日立建機(上海)有限公司の2005年より10年間続けてきたホルチン砂漠緑化運動が挙げられます。過放牧等の原因で破壊され砂漠化してしまった生息地の回復、衰弱な生態系の保護をめざし、中国内蒙古自治区のホルチン砂漠内で「日立建機の森」と称した10万㎡の砂漠地帯を植林、緑化に大きく貢献しました。2015年に新たに始まった次の10カ年計画では、パートナーであるディーラー26社も新たに加わり、13万㎡の砂漠地帯への植林を始めています。緑化活動は生産拠点から離れた場所にあり、その拠点ではなく、内モンゴル地域周辺の環境にポジティブ影響を与えています。
砂漠地帯へ植林した樹木を不当な伐採や野生動物から守り、大きく育てることに成功。緑化が進んだことで風塵被害を抑え、環境への改善につなげました。また、植林した木々の世話を付近の村の人たちに依頼することで、継続的な雇用を生み出すことにも貢献しました。日立建機グループの生物多様性保全への貢献策のひとつとして、引き続き推進していきます。
日立建機グループではアセスメントを基に、主要ガイドライン※1を総合的に考慮し、「生態系保全活動取組リスト」を策定しています。 日立建機グル―プではこの策定した「生態系保全活動取組リスト」を基に、活動の実施状況や目標を明確にし、更なる推進をめざしています。
※1 環境省「生物多様性民間参画ガイドライン」、JBIB「いきもの共生事業所推進ガイドライン」、JBIB「生物多様性に配慮した企業の原材料調達ガイドライン」、JBIB「いきもの共生森づくりガイドライン」など
生物多様性の4つの危機への対応
生物多様性は4つの危機に直面しています。日立建機グループではこれらの危機に対応するため、製品や従業員参加による支援を行っています。特に第1 の危機への対応として、ホルチン砂漠の緑化活動を行っています。2005年から第1次10ヵ年計画の支援を開始しました。また2015年からスタートした第2次10ヵ年計画では ディーラー26社にも賛同いただき、協働で緑化活動を展開しています。
第1の危機
(人間活動や開発による危機)
開発や乱獲による種の減少・絶滅、生息・生育地の減少
第2の危機
(自然に対する働きかけの縮小による危機)
里地里山などの手入れ不足による自然の質の低下
第3の危機
(人間により持ち込まれたものによる危機)
外来種などの持ち込みによる生態系のかく乱
第4の危機
(地球環境の変化による危機)
地球温暖化による危機
※ 生物多様性センターHPの「生物多様性に迫る危機」より一部引用
試験場での自然環境保全
北海道にある日立建機 浦幌試験場は1992年に設立して以来、地域特有のミズナラ林、湿生広葉樹林などの緑と自然を残しつつ、お客様に安心・安全で高品質の製品を提供するための重要な役割を担ってきました。試験場では、長期計画に基づいた森林保全活動を行っています。 事業活動を行う上で、敷地内の生態系へ与える影響を最小限に抑えるために自然環境調査を実施しています。浦幌試験場の広大な樹林内には様々な動植物が生息・生育しており、これら生態系の把握と保護のため林地開発工事の度に、鳥類・植物・底生動物の調査を実施しています。 また、浦幌の自然環境のすばらしさや自然保全活動の意味を再発見してもらうことを目的に、地元の小学生を対象としたエコスクールを毎年開催しています。
琵琶湖の保全
滋賀県にある日立建機ティエラは、琵琶湖を切り口とした2030年の持続可能社会へ向けた目標(ゴール)であるマザーレイクゴールズ(MLGs)に賛同し、琵琶湖保全のための様々な活動を行っています。役員をはじめ社内の環境責任者向けに、琵琶湖を守り・活かすために重要なことを学ぶ琵琶湖講習の開催、湖や川周辺の清掃や外来種駆除、田んぼのオーナーとしての活動などを行っています。
「企業のための生態系評価(ESR)」を実施
事業別の生態系への依存・影響度を調べるためにWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)の「企業のための生態系評価(ESR)※2」を用い、建設機械の使用用途により解体作業、浚渫作業、林業など7つの事業分野に分けサプライチェーン全体で生態系への依存度、影響度を定量評価し、それを基に生態系保全の取り組みへの優先順位をつけています。
※2 ESRとは:Corporate Ecosystem Services Reviewの略。企業のための生態系サービス評価で自然から受ける恩恵を「生態系サービス」と定義した上で、森林、水、遺伝資源、などの「供給サービス」や、大気の調節、気候調整などの「調整サービス」のそれぞれの項目について、企業活動がどの様に生態系に依存し、影響しているかを知り、それによるビジネスリスクとチャンスを管理し、今後の戦略策定に繋げていくための体系的な方法論。