社長メッセージ

ステークホルダーの皆様とひとつになって

2017年4月1日付で代表執行役 執行役社長に就任いたしました平野耕太郎です。日立建機グループは、世界中のさまざまな現場でお客様や社会のニーズに応えるべくバリューチェーン(製品・サービス・部品・中古車・レンタル・ファイナンス・再生)およびソリューションの提供を通じて、社会インフラの整備や資源開発などの社会の基盤づくりに寄与しています。
2016年度の事業環境を見ますと、建設機械の世界需要は底打ち感がありますが、地域で強弱もあり、世界での大きな政治イベントや為替変動リスクなど、引き続き厳しい事業環境が続くとみています。このような時に経営の舵取りを引き継ぐことになった私は、重い責任を感じるとともに、「前向きに進んでいこう」という気持ちでいます。しかし、社長一人でできることには限りがあります。
当社グループには約2万4千名の従業員、私どもに期待と信頼を寄せてくださるお客様、取引企業様、株主・投資家の皆様の大きな存在があります。すべてのステークホルダーとひとつになり、この厳しい事業環境に立ち向かっていく決意です。

3つの強みでグローバルの期待に応える

私は、日立建機グループの土台はやはり「Kenkijinスピリット」にあると思っています。これは、そもそも日立創業の精神「和」「誠」「開拓者精神」に発したもので、「3つのC」、Challenge、Customer、Communicationの思想が貫かれています。失敗を恐れず、チャレンジングな精神を持ってお客様や社会の声に真摯に耳を傾ける、このような従業員が世界各地で、カスタマーファーストで企業活動を行っていることが当社グループの最大の強みです。
2つめの強みは「Kenkijinスピリット」の絆のもとに、長年当社の製品をお使いいただいているお客様の存在です。当社の機械稼働情報のプラットフォームである「Global e-Service」に登録されている機械のうち、遠隔監視できる通信端末搭載機は144カ国に約23万台あり、アフターセールスのサービスソリューション「ConSite(コンサイト)」の契約は5万台超あります。こうした機械とお客様と現場とのつながりが当社グループの力の源であり、財産となっています。
そして、3つめの強みは日立グループの総合力です。お客様の事業課題は、安全性・生産性の向上とライフサイクルコストの低減です。お客様は建設機械本体を通じてこれらの解決を期待するだけでなく、現場全体の運営でこれらの解決を期待しています。そうした中で、日立の有する情報通信・省エネルギー・解析などの先端技術やブランド力を「One Hitachi」として協創することで、競争力のあるソリューションを開発・提供できることが日立建機グループの強みです。今後、提供するソリューションの競争は激化するでしょうが、この強みは我々が成長する上で大きな柱になると考えています。

前中期経営計画「GROW TOGETHER 2016」では、最新の排出ガス規制に対応した製品を開発・市場導入することはもちろん、次期モデルの研究開発やマイニングダンプトラックのAHS(Autonomous Haulage System:自律走行システム)化の開発などを計画通り進めました。また、KCMの連結子会社化によるホイールローダ事業の強化や、マイニング分野の部品・サービス事業をグローバルに展開するアメリカのH-E Parts社と、マイニングの鋳造製品の製造・販売を手掛けるオーストラリアのBradken社を日立建機グループの一員に迎えるなど、バリューチェーンの強化を進めました。一方で、さらに強固な財務体質をめざして、事業・生産体制の見直しや固定費の削減など、事業構造改革を行いました。

2020VISIONの最終節は「 Reliable solutions」の実現

2017年度から始まる中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」では、変化に強い企業体質づくりと成長戦略の刈り取りを促進していきます。「CONNECT TOGETHER 2019」は、お客様とつながる、製品と新しいサービスとソリューションとがつながる、従業員同士・ビジネスパートナー・地域社会などのステークホルダーとつながることを意味しています。土木建設業界では、今後現場のICT・IoT活用が急激に進展していくものとみています。中期経営計画では、バリューチェーン全体でお客様の期待を上回る「Reliable solutions」を継続的に提供することで、お客様からゆるぎない信頼を勝ち取り、確固たるグローバル建機メーカートップ3のポジションを築くことが大きなテーマと考えています。

中期経営計画の1つめの戦略はアフターセールスです。日立建機グループの事業は、研究・開発・生産に始まり、お客様への新車販売・レンタル・サービスを行い、更新時には中古車の取り扱いを行うという長いライフサイクルが特長です。お客様にとっては、新車やレンタル機が現場に納入された後、また故障した機械が修理された後、実際に機械を稼働させてからが「ビジネスのスタート」であり、私どもはあらためて「アフター」の概念を「スタート」と認識し、お客様にこれまで以上に価値のあるサービスやソリューションを提供して、満足度向上を図っていきます。

2つめの戦略は、当社グループの主力製品で、グローバルでトップレベルの製品力を持つ油圧ショベルに加え、ホイールローダ、ダンプトラックの分野でも開発力と販売力の両面で競争力強化を図り、第2、第3の主力製品としての成長をめざします。ホイールローダについては、排出ガス規制対応機の開発を進めると同時に、生産効率の向上とコスト低減を強力に推進、販売面ではグローバルでの販売サービス体制を強化し、販売効率の向上を図ります。ダンプトラックでは、すでにシリーズ化した高地仕様や、低燃費と作業効率の向上を実現するトロリー仕様のモデルの拡販を図ることと、AHSの本格商用化、前述のマイニング分野を担う2社とのシナジー、ならびにFMS(Fleet Management System:鉱山運行管理システム)を提供する当社グループのWenco社とのシナジー効果をさらに創出していきます。

3つめの戦略はICT・IoTソリューションです。これには日立が提供するIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」をはじめとした日立グループの幅広い先進技術と、ビジネスパートナーのエキスパート技術を融合したオープンイノベーションを活用して開発を加速していく考えです。当社グループは、お客様の課題である安全性・生産性の向上とライフサイクルコストの低減を解決するICT・IoTソリューションを「Solution Linkage(ソリューションリンケージ)」と新たにネーミングしました。従来、お客様は建設機械に対して掘削力や作業スピード、操作性、耐久性、低燃費を求められてきたわけですが、これらに加えて現在では自動運転、さらには施工プロセス全体の効率化や現場運営の最適化を求められています。例えばマイニング現場では、当社が提供するダンプトラックのモニターに周辺画像を表示する「Aerial Angle(エアリアルアングル)」といった技術をすでに開発・実用化し、機械の衝突事故を軽減するなどの安全性の向上にお役立ていただいています。また、お客様は採掘した鉱物を港まで運ぶ鉄道や発電、水処理などのプラントも保有していますが、関心事は我々の提供するマイニング機械の効率化だけではなく、そのマイニング現場全体の安全性、効率化を求められています。日立グループは、「One Hitachi」の総合力で幅広い事業でソリューションを提供できますので、お客様の現場全体の事業課題を解決することができます。もう一つの例として、国内では昨年度より国土交通省が、土木建設工事全体の施工プロセスを最適化し生産性を高める「i-Construction※1」を導入しましたが、当社ではこれに対応して、3次元データを読み込み半自動で簡単に操作できるマシンコントロール機能とマシンガイダンス機能を搭載した、ICT油圧ショベルを昨年市場導入しました。今後さらに制御精度を高めていくことはもちろん、測量から検測に至る施工プロセスのソリューション開発をお客様とともに進めていきます。同時に、機械の安定稼働とライフサイクルコスト低減に寄与するサービスソリューション「ConSite」を、センサー技術や解析技術を活用して一段と進化させていきます。

※1 i-Construction
ICTを活用して土木・建設現場の生産性と効率を向上させ、企業の経営環境の改善を通して、建設現場に携わる人の賃金水準の向上と安全性の確保を推進する、国土交通省の取り組み。2015年12月、i-Construction 委員会が発足し、建設機械や測量へのICT導入と併せて、規格の標準化、年間の施工時期の平準化などの基本方針が示された。2016年度から、国土交通省の直轄工事で導入が始まっている。

事業を通じたCSV3テーマの目標を設定

私どもの製品・サービスで環境負荷の低減を図ることは大変重要です。これまでの建設機械の進化の過程と、土木建設業界やマイニング業界の発展の歴史を振り返っても、私どもの提供する価値とは、社会の持続的な発展に役立つことです。これらに寄与する技術やサービスを生み出すことこそ、企業市民としての存在意義であり、使命だと認識しています。
2015年の国連でのSDGs※2合意、COP21※3でのパリ協定採択など、グローバルにおける社会・環境課題の解決に向けた取り組みを受け、当社グループの事業と環境や社会課題との関係についてあらためて評価を行いました。その結果、事業を通じたCSV(Creating Shared Value)へのアプローチとして「グローバル環境課題の解決」、「社会基盤を支える現場力の強化」、「コミュニティの発展への貢献」という3つのテーマを掲げ、2016年度はこれらのテーマごとに重点施策を策定し、個別の目標と中長期のKPI(重要業績指標)の設定を行いました。
中でも、製品の環境負荷の低減については、2030年に2010年比で温室効果ガスを33%削減するという目標を掲げています。当社の事業において温室効果ガスは、お客様に提供する製品の使用過程で多くが排出されます。従って、各国の排出ガス規制に適合する製品を提供することはもちろんですが、環境性能の高いハイブリッド機の開発やサービスソリューション「ConSite」を普及・進化させることを通して、お客様の生産現場で生じる無駄なエネルギー消費を低減する取り組み、またダンプトラックの自律運転と最適な運行管理システムの開発などを加速しています。

※2 SDGs
Sustainable Development Goals= 持続可能な開発目標。2015年を期限としたMDGs(ミレニアム開発目標)を継承、発展させたもので、2015年9月に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として国連総会で採択。先進国、開発途上国に対する具体的な行動指針で、貧困、飢餓、差別、気候変動、生物多様性などに関する責務を示している。

※3 COP21
2015年11月30日からフランス・パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議。京都議定書が失効する2020年以降の枠組である「パリ協定」が世界196の国と地域によって採択された。開発途上国も含めて温室効果ガス削減を約束するのは初めてとなる。

サステナブルな経営が中長期の成長に導く

近年、機関投資家の間ではESG投資※4が増加していますが、そもそも社会基盤づくりに関わる事業を展開している当社グループに関していえば、ESG経営は、投資家の方々の関心に応えるためだけでなく、自らが社会と企業の持続的な成長のために、取り組まなくてはならない課題だと考えています。
前述のように、策定したCSVテーマも、経営として取り組むと同時に環境や社会課題の解決につながるものであり、これらを継続的に取り組むためには、自ずとESGを考慮に入れる必要があります。この環境や社会の課題に対して私どもの事業を通じて解決に寄与していくことは、事業機会の拡大を意味する一方で、競争の優位性の確保にもつながります。そのために、中計期間では研究開発をさらに強化し、売上収益に対して一定の比率の投資を継続的に充てる考えです。そこに日立グループの力とビジネスパートナーとのオープンイノベーションでの取り組みが加わりますから、その効果はさらに大きなものになるとみています。
また取り組むべき課題として、従業員が働きやすい環境を整備することは重要なことと考えています。日立建機グループでは、事業活動を支える従業員一人ひとりの価値観や個性を認め、ダイバーシティを経営の重要課題と位置付け、2011年度より「女性・マイノリティ活躍支援」、「ナショナルスタッフの活躍支援」、「働き方改革(ワーク・ライフ・バランスなど)」といった推進に取り組んできました。今後も一人ひとりが仕事に「誇り」と「喜び」を感じられる職場づくりを促進していきます。
CSV3テーマの実行・実現には、当社だけがいくら効率的に動こうとしても満足のいく成果を上げることはできません。お客様、取引企業様などのステークホルダーと一緒になって初めて実現できることであり、これらの活動を行いながらしっかりした事業基盤を築き、業績を向上させていくことにより、多くの投資家の皆様から関心を寄せていただけると思います。この好循環が、全体として日立建機グループの中長期的な成長につながっていくものと認識しています。

※4 ESG投資
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮した活動を行っている企業を重視・選別する投資手法。

社会インフラづくりの担い手としての使命と役割

2016年は熊本地震、台風10号などの大変な自然災害がありました。被害に遭われた方、そして、現在も復興の途上にある各地の方々に心よりお見舞い申し上げます。
6年前の東日本大震災では、お客様から「建機がすぐに必要だから一台でも出荷してほしい」とのお声がありました。現場は何とか一台でもつくろうと部品を集め、取引企業様にも協力をいただいて、急いで油圧ショベルを生産・出荷しました。その時に、当社グループの製品は社会の基盤を支える機械なのだと強く実感しました。
私どものつくる建設機械は、被災地の復旧に欠かせないものであり、一方で災害による被害を最小限にとどめるためのインフラ構築にも役立っています。私どもがより優れた機械をつくって、機械の安定稼働をサポートしていくことが、社会インフラ基盤をしっかりさせることに直接的につながっていくという意識を自ら強く持つべきだとあらためて感じました。
現在取り組んでいる高効率な生産体制の確立と同時に、万が一の際にも製品を供給できるよう、生産設備の災害対策や調達体制を構築・強化していきます。

日立建機は、2020年に創立から50周年という節目の年を迎えます。2017年度から始まる中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」では、今まで以上に、お客様の課題解決に軸足を置いたバリューチェーンの深化に向けて、大きく会社の舵を切っていきます。過去半世紀で培った経験やノウハウに満足することなく、お客様と社会に寄り添い、自らの使命と役割を正しく認識し、事業を通じてお客様や社会の問題解決に従業員一丸となってチャレンジしていきます。これこそが2030年、2050年の日立建機の未来を支えていくものと信じています

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