日立建機グループの総力をあげて北中南米全域を結ぶ新たな事業体制を再構築
日立建機の北中南米事業は、1988年に米国ノースカロライナ州での製造・販売の合弁会社ディア日立社(Deere Hitachi Construction Machinery Corporation)を設立して以来、ディア社とのパートナー関係によって展開してきました。しかしながら、合弁設立当初と現在では市場環境が大きく異なっており、それに伴う両社の組織体制や構造も変化しています。今後は、それぞれが独自の事業戦略によって成長をめざすことが望ましいと判断し、提携の発展的解消という結論に至りました。
この合意により、日立建機は2022年3月以降、独自の経営戦略に基づき、北中南米市場全域で最新の製品・技術・サービスをお客さまに直接提供していくことが可能になりました。2021年8月の合意から半年余り、世界的に高性能・高品質が認められたパワフルな油圧ショベル、超大型のマイニング機械などについて、北中南米向けの生産を急ぐ傍ら、新たな販売・サービスのネットワークを再構築。日立建機アメリカを軸に域内のグループ会社と、日立ブランドで展開する油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダを扱ってきた代理店ネットワークを活用し、北中南米全域でマーケティングからサービスまでを提供する体制を整えました。
コンパクト・コンストラクション事業は北米に特化してリソースを集中
2021年10月、米国ジョージア州の日立建機ローダーズアメリカは、社名を日立建機アメリカに変更し、北中南米全域における日立ブランドの建設機械の販売と部品・サービス事業を統括する機能・権限を担うこととなりました。製品としては、日本で生産するICT建機を含めた最新機を中心にラインアップを大幅に拡充。これまでホイールローダのみを扱ってきたスタッフや各地の代理店がほぼすべての製品を扱うことになるため、トレーニングによる強化とともに新規の採用も実施しました。コンパクト・コンストラクションの油圧ショベルについては、北米市場の高度なニーズに応える最新の高効率な油圧システム、作業現場の安全性を向上させる「AERIAL ANGLE」、世界中で高い評価をいただくサービスソリューション「ConSite OIL」を標準搭載した機種などを提供し、あわせて域内のマーケティング体制も確立していきます。
2022年3月からは、北米でホイールローダ販売を始めた当初から掲げるスローガン「REPUTATIONS ARE BUILT ONIT」(信頼の証を乗せて)を旗印に、トータルソリューションの高い価値をアピールする再上陸キャンペーンを開始しました。
ファイナンスソリューションの提供も開始し、中古車、レンタル、部品・サービスの提供価値も強化
このたびの再上陸では、伊藤忠商事およびその関連会社との連携によって、ファイナンスソリューションの提供も開始しました。これによって、日立建機の経営戦略の要であるバリューチェーン事業の中でも特に重要なセグメントである中古車販売、レンタル事業の展開を加速する環境が整いました。さらに、部品の物流や在庫管理等を担う拠点を拡充することで、収益性の高い部品・サービス事業をスタートすることができました。今後、世界最大規模と言われる北米建設機械市場のお客さまに、レンタル、中古車、部品・サービスを含めたバリューチェーンの提供価値を大きく広げていきます。
● 新たなパートナーとの主な協業の内容
① ファイナンスにおける協業
② 海上輸送、北米の物流ネットワークでの協業
③ 中長期の経営基盤強化
グループ会社のネットワークをフル活用し、マイニングに新たな価値を提供していく
マイニング事業では、これまで世界各地のマイニングフィールドで活躍してきたグループ会社のネットワークをフル活用し、北中南米全域の攻略をめざします。まず、油圧ショベルの足回りや掘削用バケットなどを製造・販売する Bradken社の製品を市場に投入。部品再生を行うH-E Parts社では、マイニング製品の再生事業を強化します。鉱山運行管理システム(Fleet Management System:FMS)などの先進ソリューションを世界の鉱山に提供しているWenco社では、ダンプトラック自律走行システム(Autonomous Haulage System:AHS)の開発を急いでいます。AHSは現在、製品化の最終段階となる実証実験を豪州で行っており、これを北中南米市場にも展開します。
また、市場では環境への関心が急速に高まっている中、24時間の高い稼働率・信頼性が求められるマイニングの現場では、単なるCO2削減ではなく排出をゼロにする「鉱山のCO2ゼロエミッション」が求められています。日立建機グループは、これまで積み上げてきた建設機械の環境技術の強みを最大限に活かすとともに、スイスのABB社や日立製作所研究チーム等と取り組むオープンイノベーションにより、この高い要求を早期にクリアすることをめざしていきます。具体的には、機械のゼロエミッションはもちろん、鉱山全体のオペレーションを“見える化”する「ConSite Mine」の提供など、あらゆる先端技術を組み合わせたトータルソリューションを提供していきます。
ハードロック比率が高い中南米で「鉱山のCO2ゼロエミッション」を実現するために
鉱山で使われている設備・機械の中で、最も大量にCO2を排出するのがダンプトラックですが、長い登坂路の多い中南米の鉱山では、特に環境への負荷が大きくなります。日立建機は、鉱山業界で130年以上の歴史を有するABB社の革新的な蓄電技術を使用することで、ディーゼルエンジンから完全な電気駆動への転換が可能になることに着目し、フル電動リジッドダンプトラックの共同開発に着手しました。
南米のペルーやチリは、ハードロックである銅鉱山が集中している市場です。銅はIoT・AI、バッテリー技術発展の中核を成す鉱物であるため、中南米での「鉱山のCO2ゼロエミッション」の実現は、社会的にも大きな意味を持ちます。今後、グループの持つ技術力とソリューションを結集し、将来を見据えた開発を進めていきます。
全世界の建機、マイニング市場における北中南米市場の規模は30%から40%を占めると言われており、そのような世界最大規模の市場において、日立建機のグループ経営戦略に基づいた事業展開を本格化するという大きな挑戦ができることを、非常に楽しみに思っています。この挑戦は、日立建機アメリカ、Bradken社、H-E Parts社、Wenco社等のグループ各社をはじめ、ABB社、日立製作所の研究チームと一緒に行っていくものです。いずれも他に代えがたい技術の強みとお客さまへの提供価値を持つ組織で、これらが手を組み、お客さまへのソリューションを提供するという目的を成し遂げようとしていることに大きな誇りを感じます。お客さまはそのソリューションがほしいと心待ちにしておられますし、これを実現できるのは現在のところ、私たち以外にはいないと自負しています。
私はこのたびの事業展開を北中南米大陸への再上陸と捉えていますが、日立建機グループが直に足を踏み入れることによって、お客さまの選択肢は大きく広がり、受け取る価値も大きく広がると考えています。新車だけでなく、部品・サービス、レンタル、中古車、部品再生、ファイナンスという幅広いメニューの中から、お客さまの課題にあったメニューをお選びになり、自社の重要課題を解決していただくことができるようになります。
今後は、お客さまとのあらゆる接点で真の課題を捉え、より深化した製品・ソリューションを提供するため、販売・サービススタッフだけでなく、開発や品質保証のスタッフも現場に出向き、お客さまの声を直接聞き、フィードバックしていく取り組みを始めます。北中南米の真っさらなキャンバスに、お客さまと当社の新たな信頼の絆を描いていくことに、私もスタッフも大変やりがいを感じています。
そして日立建機グループは、このたびの再上陸で約300億円の投資を行っていく予定です。新たな事業体制のもとで、事業の拡大と収益の安定化を実現したいと思います。